#3 総理にされた男(中山七里)
上手な書評
全体的な魅力を伝えつつ、本当に良い箇所は抑え気味。「ピーナッツ」と同じで、終盤のドキドキ感が堪らなかった!
第一印象
全盛期のキムタクのドラマ(CHANGE)と同じだと思っていた。ひょんなことから総理に上り詰めた男、彼を支える個性的なブレーンたち、秘書との恋愛、やりきった後の帰省ーこんなことを予測していたら後半の重みが全く違っていた。映像では出せない魅力がぎっしり詰まっていた。
章ごとのメッセージ
第一章 vs閣僚
ここは主人公・神納慎策が初めてエラい議員さんに揉まれるところ。比較的あっさり。
第二章 vs野党
揚げ足取りに走りがちな野党議員を主人公・神納慎策が国会答弁で完膚なきまでにやり込める。登場する野党議員の描写が実在する議員に似ていて面白い。
第三章 vs官僚
一向に進まない東北の震災復興の障壁となっている官僚制度を変えるために、あの手この手を使って法改正に挑む。開票が進み、最後に大逆転が起こるシーンに胸がすく。
第四章 vsテロ
ここからが怒涛の展開。アルジェリア大使館の占拠、人質の虐殺、憲法との対峙、ブレーンとの別れ等、さまざまな障壁を乗り越え、自衛隊を現地に向かわせて収束させるも、犠牲者6名を出し、与野党から窮地に追い込まれる神納。ドキドキハラハラの連続。
第五章 vs国民
自衛隊の出動命令と犠牲者の件を報告するために行なった緊急記者会見でのスピーチ内容が素晴らしい。国民の政治への閉塞感を代弁しつつ、日本国民として同胞の命を守る義務感を強調し、NHKでの国民投票に誘導していく。ページのほとんどが神納の言葉で埋め尽くされており、「政治こうあるべき」との想いを強くさせる。
素敵なエピローグ
怒涛の展開を超え、国民の信を得て、国会に臨む前に、馴染みのイタリアンでカノジョ(珠緒)を待ち受け、「ファーストレディになってくれないか?」で完結。読者の緊張感を弛緩させるかの如く、わずか数ページでの描写。身代わりとなった元総理の真垣統一郎もその祖父も天涯孤独のまま死去しているため、誰にも知られないまま、総理を続けることができて、さらに、伴侶を迎えることもできるという見事な終わり方。伏線の回収がうますぎる!