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#9 失踪者(下村敦史)
書評
登山に興味はないが、下村敦史作ということ、そして、なんとなくドキドキさせされる書評に惹かれて購入した。
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ミステリー<友情
というのが率直な感想。勘のいい読者なら樋口友一の秘めたる謎(替え玉登山)に気づくのは十分可能。自分も全体の1/4ほど読み進めた時点で正しく推測できた。しかし、周辺の謎の行動(なぜ山頂登頂を遅らせたのか?なぜ生還後、身元を隠したのか?なぜ谷本勇一が複数存在するのか?)の種明かしには至らず、それが樋口の真山に対する友情の証であったことをエピローグで畳み掛けられて、一気にのめり込んでしまった。
特別な感情
最大のキモは、直接、真山に想いを伝える術を持たない樋口が残した示唆的行動に真山が吸い寄せられ、すべての真相に辿り着くという展開。最近の小説の流行りではあるが、死者・生者の互いの想いが通じ合うというスピリチュアルな流れに惹かれる読者は多いはず。
だがしかし
とことん引っ張って引っ張って引っ張って、最後の最後の最後のほんの数ページで一気に種明かしをするという、昨今のパターンには少しお疲れ気味。そのマンネリ感を覆すほど、登場人物の心の機微を複雑に絡み合わせる下村敦史氏の才能に唸らされた。『同姓同名』同様、実に巧妙。
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