#7 同姓同名(下村敦史)
まじのアクロバット
書評そのままですが、ほんとうにそのまんま、アクロバット的な社会はミステリーでした。中盤の重さを乗り切れたら間違いなく虜ににる!
混乱からの牽引
とにかく「大山正紀」のオンパレード。次々と伏線が投入され、様々なトリックが導入され、その度に真犯人像が入れ替わり、読者に混乱をもたらすが、最後は一切の矛盾なくすべての謎が解き明かされる。これはもはや芸術作品。史上最強のミステリー!
中盤の膨らみは吉か凶か?
解説でも記されているように、この小説は単なるミステリーではなく、「少年法」「実名報道」「死刑」「私刑」「被害者遺族」「誹謗中傷」を考えさせる社会派小説の特性を帯びている。そのため中盤はミステリー色が薄れ、やや冗長なイメージが漂うが、そこを乗り越えられたら、どハマり間違いなし。ここがまさに「作者の会心の笑み」の魅せどころ!
おまけの短編に魅力が凝縮
『同姓同名』のボリュームに圧倒されそうな人には、最後の40ページほどに掲載された『もうひとりの同姓同名』を勧めたい。「御木本雄大が須藤夏生を殺害」で始まる物語だが、ここにも同姓同名が複雑に絡み合い、読者を一瞬、混乱のドン底に叩き落とすも、即、正常にゴールへと導く。著者のノウハウを余すことなくすべて凝縮させる精神性に乾杯🍻
メッセージ
SNSの誹謗中傷には気をつけよう、と強く思わせる物語でした。最後に最も印象に残った深いフレーズを紹介します。
『謝罪して罵倒が正当化され、中傷への反論は反省の色なしとみなされる今の世の中』
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