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月が綺麗ですね

本や、教科書で皆さんも聞いたことがあるセリフだと思う。僕はこのセリフが好きだし、いつか思いを寄せている人に言ってみたい。

人生はいろんなことが起こる、嫌なことも素敵なことも様々なことが突然にやってくる。皆さんにも起こるだろうし、僕にも起こった。

「高三になってもずっと読書かよ!」そう言ったのは僕の幼馴染だ、小学生から一緒で一人でいる僕にいつも世話を焼いてくる、初めは一人が好きだったから鬱陶しく思っていたが、妙にタイミングや距離感を図るのが上手い次第に僕にとっても親友と呼べるような仲になっていた。

「いいだろ、僕は本が好きなんだ」

「そりゃいいけどよ、人生で一度きりの青春を謳歌する高校生のうちに浮いた話の一つもないんじゃ心配にもなるさ」

「そんなこと言って、お前はどうなんだよ、彼女の一人もいたのか?」

「痛いとこつくな、俺は絶賛努力中だ!」

何を言ってるんだかと呆れつつ、本当に大丈夫か?と少し心配になる。ずっと一緒に過ごしてきて、なんでも話す仲ではあるが、一つ話してないことがある。僕には高校三年間、片思いしている人がいる。

その人とは入学して一週間経った頃だろうか、そろそろ高校にも慣れたので一人で図書室に行ったとき、彼女はそこにいた。

本を読む姿が美しかった。西日に照らされたかなり短い黒髪が艶々として、遠目でも分かるほど華奢な肩や腕、本を持つすらっと伸びた指、なんといっても本を読んでいるだけとは思えないほど凛とした立ち振る舞いに心が奪われた。

それからというもの学校の中で見かけるたびに、目で追うようになってその度に綺麗だと、いつの日か本で読んだ光景を思い出すようになっていた。

いつか伝えよう、そう思ってるうちに猛攻生活も半分を過ぎようとしていた。梅雨が終わりセミの声も弱ってきた頃、僕は図書委員になり、仕事にかこつけては図書室に入り浸っていた。

その日はその年の中でもかなり面白い作品に当たり、時間も忘れて文字を追い世界に没頭していた。

気づいたら陽は沈み、学校はがらんとして人の気配もなくなっていた。何時か確認しようとスマホを開く、19時30分そう画面位表示されてもう帰らなきゃと図書室を出る。通知が一件きていたので、確認すると

「呼んだけど夢中になってたから、先行くわ!あんま遅くなんなよー」幼馴染からだった。気が利くのか薄情なのか、どちらもかと少し可笑しく思う

「今気づいた、これから帰る。」それだけ送ったあいつならこれで十分だろう。

非常灯の明かりだけが不気味に光る廊下を 早足に歩いた。階段を降りていると。

「いま帰り?」

どきっとして振り返る、驚いたのは暗がりから声をかけられたことじゃなくその透き通った声で彼女だと分かったからだ。

「うん、君も?」

「そう」

「遅いね、なにしてたの」こんなとこで2人きりになるなんて、、、跳ねる心臓におとなしくするよう願いながら言葉を振り絞る。

「本読んでた、そっちは?」

「僕も本読んでた」

「一緒だね」

たった四文字がこんなに嬉しかったのは初めてだ、と噛み締めていると。

「一緒に帰ろっか、遅いし」

一瞬なにを言われたのか分からなかった、いや本当は分かっていたが、嬉しさの許容範囲を越えて思考停止した。

「どうしたの?」

「なんでもない、帰ろっか」

今にも踊り出したいほどの気分を隠しながら、隣を歩く彼女の月明かりに照らされた横顔を見ていた。

飲み込まれそうなほど真っ暗な夜空には星の明かりなど目に入らないほどに輝く満月が浮かんでいた、その光が彼女を照らしていて、ふとあの言葉が浮かぶ

「月が綺麗ですね」

月は彼女だ、彼女を照らすための月なんだそう思った。















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