ぼくは『ちゃん』
窓に映るひとは『ぱぱ』 『まま』『ねえね』『ちゃん』
吾子は自分を『ちゃん』と決めたり
息子おもちくん、鏡を見るのが好きである。
今に始まったことではない。
NICUで長いこと過ごしていた、病院がおうちだった頃から、彼のベッドには鏡がセットされていた。
(しかも、包帯を器用に使って、おもちが眺めやすい角度に鏡をセットするのだから、看護師さんたちはすごい。魔法のようである)
もちろん、夜、明るい部屋にいて、暗い窓に写るひとの姿を眺めるのも、スマホやパソコンでビデオ通話したり自撮り画面を眺めるのも、好きである。
そして、その夜も、居間に集まった5人家族が写る窓を眺めながら、ひとりずつチェックするように、
『ぱーぱ』
『ままー』
『ねぇねー』
『ねぇねー』
と呼んでいって、さいごに
『ちゃん!』
と、満足そうに仕上げた。
そう、『ちゃん』とは、おもちくん当人のことである。
ここではおもちくん、とくん付けで書いているが、現実世界では『おもちちゃん』と呼ばれているのだ。
(私がちゃん付けを始めたのではなく、NICUの方たちが『おもちちゃん』『おもちちゃん』と呼ぶので、自然とちゃん付けになった経緯がある)
そうか、自分のこと、わかってるんだねぇ。
例によって1回言ったら再び言ってくれることはそうそうないのだが、ふふっとなった。
秋空に冬の見え隠れするこのごろ。
窓に『ちゃん』の姿のうつる時間も、のびている。