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2024年に出会ったアルバム + ベストバイ【後編】
後編です。
気づいたらアルバムよりベストバイの方にだいぶ熱が入ってます。
まあ普段がアレなんでね。たまにはグダグダ喋らせてください。
前編はこちらから↓
Vacant Wave「change of pace」
これはいい!
ノイジーなドリームポップをやってるアーティストなんですが、作品を毎年2枚ずつ出してて、結構多作です。「never show you」のモヤモヤっとしたギターのイントロにやられて、そのあとビリビリっとした何言ってるか分かんねぇボーカルでさらにやられました。
サイケ好きのツボを押さえてるのにしっかりポップに決まってます。確信犯ってヤツですね。これは。
橋本絵莉子「街よ街よ」
1曲目の「踊り場」を聴いた時の落ち着きというか、心の余裕のようなものに惹かれました。「私はパイロット」にしても「宝物を探して」にしても、歌ってること自体は自由奔放なんだけど、その中に一度聴いたら忘れられないような言葉がさりげなく混じってます。ちなみに「宝物を探して」のMVは「はいよろこんで」の人が作ってます。かわいいですよ。
アイナ・ジ・エンド「RUBY POP」
ワケあってBiSH時代からこの人の歌はよく聴く機会があったんです。グループ時代から個性的な人だなーと思ってたんですが、ソロになってからタイアップで何度も耳にするうちに、すごくなじんだというか、要するにクセになったんでしょうか。「アイコトバ」は今年トップクラスで気に入った曲です。
Tempalay「((ika))」
いまさら言うのもなんですが、21年の『ゴーストアルバム』は傑作でした。それもちょっと信じられないレベルの。そんなわけで期待度大だった今作ですが、それを裏切らない素晴らしさでした。とはいえ、音楽の密度はそのままに今回なんと19曲も詰まってるんで、割と覚悟のいる一枚です。
よくGEZANみたいにオリエンタリズムとか言われる人たちですが、「憑依くん」とか「あびばのんのん」に共通する和っぽい感覚はなんなんでしょう。個人的には「Room California」みたいな、壊れた音を自在に扱ってみせるカッコよさに惹かれます。
PEOPLE 1「星巡り、君に金星」
チェンソーマンのEDで知った枠です。「DOGLAND」から入ったので、最初は割とソリッドな演奏の人たちなのかなと思ったんですが、「GOLD」とか「YOUNG TOWN」はかなり曲調も明るくて、幅広いポップスのバンドだと感じました。「Ratpark」は菅原圭が参加してメチャクチャ賑やかになってます。
TOOBOE「Stupid dog」
チェンソーマンのEDで知った枠その2です。別名でボカロPをやってるってのを知って、後からなんか納得したところがあります。まくし立てるボーカルと目まぐるしいアレンジの気持ちよさはあの界隈ならではって感じですね。「敗北」とか「往生際の意味を知れ!」とか、歌のテーマに卑屈な一貫性のようなものがあるとこも好きです
ベストバイ【書籍部門】
パオロ・ケルキ・ウザイ「無声映画入門」
これは23年暮れの本ですが、例によって今年ってことで。
好きな人ならわかると思うんですが、古典映画の本、とりわけサイレント映画に関する日本語の本ってホントに少ないんです。あったとしてもサイレント映画を実際に見てたか、それに近い世代の人たちが書いた古いものが大半なんですよ。
去年出たばかりのこの本は第三版の邦訳で、原書の第一版こそ90年代ですが、これは今までからすると信じられないくらい新しい本です。ゆえに感覚も視点も新しいのです。デジタル時代の21世紀にサイレント映画を見る人のために、本当に丁寧に書かれていました。読んでいて「これ私のために書かれた本だ…」って勝手に感激しちゃうくらい。興味深いのはフィルムの修復や散逸した資料の収集など、映画の再現にまつわる項にしっかり比重が置かれていたことです。
かつてのサイレント映画本は、懐かしの映画を思い出すための本でした。対して本書は、古典映画というものを我々のまだ見ぬ作品として新たに発見するための本なのです。
ちなみにベストバイの映画部門なんですが、よく考えたら今年映画館にはいきませんでした。「ルックバック」をアマプラでギリ見ただけです。いやぁ申し訳ない。
ベストバイ【映画部門】
ブルースの魂(2Kレストア版)
だからって〈該当なし〉ってのも寂しいんで、12月30日、すべり込みで観てきました。ブルース好きなんですよ、実は。わざわざ普段なら行きもしないような新宿の映画館まで行ってきました。えらいですね。
ちなみに、リロイ・ジョーンズが書いた同名の書籍とは無関係です。
監督はアメリカの人ではなくギリシャ出身のロバート・マンスーリスという方で、70年代にフランスで制作された映画なのですが、ちょっと、というかかなり風変わりな一本です。ブルースマンのインタビューや演奏からなる音楽ドキュメンタリーと、若い男女のメロドラマ?を融合した構成で、ハッキリ言って劇映画としては稚拙な(むしろ記録映画としての問題の方が深刻な気もするんですが…)作品でしたが、「BBキングが好き!」とか「サニーとブラウニーが好き!」って人なら観た方がいいに決まってますね。そんなのは言うまでもありません。ただ、「これからブルースを知りたい!」って感じの人が最初に手を出すような映画ではない、ということだけはハッキリお伝えしときます。
以前メンフィス69の映画のまとめ記事を書いた時に、「ファリー・ルイスがハイライト!」って書いた覚えがあるんですが、この映画でも同じです。ちょっと涙が出てしまうレベルで最高でした。さらにあのルーズベルト・サイクスの演奏も観られるんだから、その手のファンならたとえ10倍の金額出してでも観る価値がある映画です。もう一度言いますが、ブルースが好きなら絶対に損はしません。
こうした歴史的な映像は、観られるってだけでも神様に感謝しなくちゃいけませんからね。いい年末になりました。
ベストバイ【ホラー部門】
フェイクドキュメンタリーQ
ご存知のとおり、今年はホラー系コンテンツの当たり年でした。背筋先生による待望の新作やTXQ FICTIONの登場、右園死児報告のような異色作と、いろいろありましたが、一つに絞るとなると、やっぱりコレですね。
YouTubeで公開されているホラー動画シリーズの書籍化です。モキュメンタリーを色々観てると、作品によってはフィクション感を隠さないものもあります。しかし、このシリーズはそういったドラマっぽさを徹底的に排していて、リアルな雰囲気が特色になってます。
モキュメンタリーの強みは、謎は謎のままがいいということでしょうか。実際このチャンネルの動画は、怪異が解決しないことがほとんどだし、恐怖の根源となるものの正体もまず明らかにはなりません。この本では動画だけでは分からなかった新事実や新展開が明かされるんですが、とにかく巧妙なのは、単なるタネ明かしにとどまっていないということです。
この手のメディアミックスは動画の内容をただなぞるだけのものもありますが、この本は違います。肝心なところは結局分からないまま。だから怖いのでしょうね。
まとめ
たのしい一年でした。
みなさんもよいお年を。