熊爪の「ともぐい」
直木賞受賞作.北海道の山奥で一匹の忠実な犬と共に一人で暮らす猟師・熊爪の生き様を描く.狩って解体した獲物の肉や毛皮,それに山菜などを売るときだけ町に下りるが,他の人間との交流を厭い,商人・良輔とその近しい者とのみ関係を持つ.兎や鹿も狩るが,熊爪にとって特別な存在は熊だ.
冬眠しなかった穴持たずとの闘い,強い赤毛との闘い,みずからの負傷,露西亜との戦争に向かう社会の中で変わりゆく人々,陽子,それらのなかで生き方と死に方を決めていく熊爪.
とても良かった.ともぐい.
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