「憲法と国家―同時代を問う」で比較憲法を学ぶ
憲法記念日にあわせて,憲法の勉強でもしてみようかと,たまたま図書館で手に取った本書を読んでみることにした.時節柄,図書館の企画コーナーには他にも多くの憲法関連書籍が並べられていたが,それらが日本国憲法を中学生でも理解できるように易しく解説しますといった本ばかりだったのに対して,本書「憲法と国家―同時代を問う」は比較憲法の解説書である.まったく趣旨が違う.そして,これまであまり考えてこなかったことを考えさせられた.難しかったけれども.
不勉強なので,「比較憲法」という研究分野について,まったく知識がなかった.もちろん憲法を比較するのだろうけれども,日本においては,外国の憲法と日本の憲法を比較することで,憲法や社会の基本問題について考察するということらしい.
本書の場合,著者の経歴が強く反映されていて,日本国憲法との比較対象は,フランス,ドイツ,そしてアメリカの憲法が主となっている.ただ,憲法を比較するだけではなく,各国の生い立ちにも触れつつ,自由,人権,民主主義,国家,議会,裁判などの関係が議論されており,とても興味深かった.
この点について,本書の紹介文には以下のように書かれている.
例えば,近代社会は,人権と国家,個人の自由と国家の強制力にどう折り合いを付けようとしてきたのか.フランス革命から現在に至るまで,人権と国家の関係はどう捉えられてきたのか.憲法は何を定めているのか.また,民主主義と法治国家はどのような関係にあるのか,あるべきなのか.民主主義が人民の権力を主張し,統治がその権力への制限を主張するなら,その間に生じる緊張関係をどう取り扱えばいいのか.
憲法記念日に,普段あまり考えない憲法のことや社会のことについて考える良い機会になった.
目次
Ⅰ 戦後史をさかのぼって―比較憲法見聞
1. 一九六〇年代の日本と西欧
2. 七〇年代から「八九年」へ ―西と東の憲法対話のなかで
3. 「憲法ゲマインシャフト」への批判 ―どう答える
Ⅱ 近代憲法の基本枠組―「国民」国家と「人」権
1. 「近代国民国家の終わり」か?
2. 「ヒューマン・ライツはヒューマン」か?
Ⅲ 近代憲法の制度運用―「民主」主義と/あるいは「法治」国家
1. 「議会政治は政党政治」なのか?
2. 「司法権の独立イコール裁判の独立」なのか?
Ⅳ 近代憲法を通して、また、それを超えて―あらためて憲法九条を考える
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