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大学・大学院・教育・研究のあれこれ

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#ベンチャー

研究とベンチャーと数学と(その3)

大学新入生に伝えたいのは,講義が面白くなくても線形代数は重要であるということだ.前回,製造業で異常検出に使われている多変量統計的プロセス管理(MSPC)を転用して,てんかん発作を事前に予知できることを示した.今回は,これらの研究にとって線形代数がどれほど大切かを見ていこう. その前に,前回までの記事を読んでいない人は,「研究とベンチャーと数学と(その1)」「研究とベンチャーと数学と(その2)」をどうぞ. 多変量統計的プロセス管理(MSPC) 前回説明したとおり,(古典的な

研究とベンチャーと数学と(その2)

製造プロセス向けの仮想計測・異常検出・異常診断・制御・最適化などの技術がヒトに対しても適用可能であり,それによって医療・ヘルスケアサービスを創出することができる.そのような研究の具体例と,さらにその製品化による社会実装を目指したベンチャー起業について書いてみる. この記事は,「研究とベンチャーと数学と(その1)」の続きであり,研究紹介の後に,線形代数などの数学を修得しておくことの重要性を示す,大学生の勉強モチベーション向上を目指す作戦の一部である. 「ヤシマ作戦」みたいな

研究とベンチャーと数学と(その1)

先日,自分が担当している京大新入生向けの講義に関して,「講義「自然現象と数学」への学生コメント」という記事を書いたところ,自分もこの講義を受けたいなど,色々と反響があった.さらに,線形代数を勉強するモチベーションが上がったという受講生のコメントを見て,自分も線形代数のモチベーションを上げて欲しいという声もあった.そこで,講義で話したことの一部をここで紹介することにした. プロセスシステム工学私自身は,化学工学専攻の出身だ.化学工学とは,石油産業や化学産業の製造設備を設計した

社会に影響を与えるために

発明王トーマス・エジソン(Thomas Alva Edison)はあまりに有名だが,彼のライバルに,ニコラ・テスラ(Nikola Tesla)がいる.テスラはエジソンと同時代の電気技師であり,発明家でもあった.その才能は途方もなく,交流送電,無線操縦,蛍光灯,テスラコイルなどを発明し,「テスラ」の名は磁束密度の単位として今も使われている. テスラは,1884年にエジソン電灯会社に入社した.そう,トーマス・エジソンの会社だ.ちなみに,自動車王ヘンリー・フォードもエジソン電灯会