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大学・大学院・教育・研究のあれこれ

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2020年6月の記事一覧

論文がない? 図書館にもか? いかに論文を入手するか

教員「○○について論文を何報か読んでまとめてみて」 ・・・後日・・・ 学生「□□と■■の論文が見付かりませんでした」 教員(サッと検索) 教員「はい.□□論文のPDFファイルはあったから送っておいた」 教員「あと,■■論文は○✖️学部の図書館にあるみたい」 このような遣り取りは大学教員あるあるのような気がする. 論文は図書館にもあるGoogle検索でトップページに表示されない情報は世の中に存在しないも同然というのは極端にしても,調べものをネットで済ますことが当然となってい

「自分を育てるのは自分―10代の君たちへ」

本書を最初に読んだのは10年以上前だが,当時,子供が中学生になったらプレゼントしようと思った.それほど素晴らしい内容で,これから自分の人生を歩んでいこうとする10代の若者に読んでもらいたい. 本書「自分を育てるのは自分―10代の君たちへ」は,教師であった東井義雄氏の,昭和55,56年に開催された2回の講演をまとめたものだ. 世界でただ一人の私をどんな私に仕上げていくか.その責任者が私であり,皆さん一人ひとりなんです. どうか自分の人生を大切にして下さいというメッセージを

データ解析視点で見た医薬品連続生産の管理戦略

最終製品の品質を確実に保証しなければならないという点で,バッチ生産と連続生産との間に違いはないが,生産方法が異なるため,バッチ生産で実績のある管理戦略をそのまま連続生産に適用できるわけではない. 連続生産の特徴は,その名の通り,原料を連続的に製造プロセスに供給し,中間製品を工程間で貯蔵することなく連続的に次工程に移送し,最終製品も連続的に取り出すことである.このため,ロットごとに中間製品の特性テストを行い,合格したものを次工程に送るという,バッチ生産で実績のあるQualit

英語論文を書くために「理科系のための英文作法」を参考にする

英語論文の書き方を伝えようとする本は数多いが,本書の特徴は,数理工学を専門とする著者が,安全な英語を書くための規則を論理的に解説している点にある.そのために,文章の読みやすさに影響を与える要因を,様々な「仮説」として提示しているところが面白い.「○○しなさい」に納得して従える人はそれでいいが,「△△なので○○すべきである」と言われないと納得できない私みたいな輩には本書の書き方はとても良い.まさに,理科系人間による理科系人間のための英語論文執筆指南書と言える. 杉原厚吉,「理

バックアップしとけよ.パソコンもプリンタも課題や論文の提出前に壊れるから.

唯一の仕事用マシン(デスクトップは持ってない)であるMacBook Proのdeleteキーが壊れて,突然,勝手に連打されて,書いた文章は全部消されるし,スライドは全部消されるしで,まったく仕事にならない.もうどうにかして欲しい. パワーポイントでスライドを作成していると,突然,スライドが消え始めて,60枚くらいあったのが瞬く間に消滅して,なぜか削除の取消もできなくなってしまっていて,それまでの作業が全部なくなる.前回保存した状態にまで戻らなければならない.そんな事態が頻発

プレゼンテーションの心構え

講演でも学会発表でも,プレゼンテーションの準備をしているときに,そしてプレゼンテーションの本番前に,私が強く意識していることがあります.それは,自分のプレゼンを聞いてくれる人達は貴重な時間を割いて聞いてくれるのだから,それに見合う以上の価値を届ける,聞いて良かったと思ってもらえるプレゼンをする,ということです.そういう想いがプレゼンの質を高めますし,自分のプレゼン技術を向上させます. もちろん,プレゼンの中身が重要であることは当然です.あなたがプレゼンする立場になったら,そ

私自身のプレゼンテーション

優れたコーチが優れたプレイヤーだったとは限りませんが,プレゼンテーションが下手な人にプレゼンテーションを教えてもらいたいとは思わないでしょう.ここまでプレゼンテーション・アドバイスと称して色々と書いてきましたが,私の言葉に説得力を持たせるためにも,少しこれまでの経験を書いておきます. 研究発表・プレゼンテーションのアドバイス プレゼンテーション・アドバイス(1):プレゼンが成否をわける プレゼンテーション・アドバイス(2):スライド作成の前にすべきこと プレゼンテーション・

教育とは何なのかを「クリシュナムルティの教育原論」を読んで考える

これまでに読んで衝撃を受けた本はいくつもある.その中に,思わず正座して読んだ本がいくつかある.そのひとつがこの「クリシュナムルティの教育原論―心の砂漠化を防ぐために」だ.大学の一教育者として,改めて自分の不明を恥じるばかりで,自分なんかが教師を名乗っていてよいのかと憂慮せざるをえない.いや,教師の務めを果たすべく,精進するほかないと思わされる. ジッドウ・クリシュナムルティ(Jiddu Krishnamurti),「クリシュナムルティの教育原論―心の砂漠化を防ぐために」,コ

プレゼンテーション・アドバイス(7):質疑応答で守るべきルール

最近の学生はプレゼンが上手だと感じます.もちろん個人差はありますが,一昔前に比べれば総じて上手になっていると思います.それに,ここで述べているようなアドバイスに従って,スライドと原稿を用意し,徹底的に練習すれば,それなりに上手なプレゼンはできるはずです.できないとしたら,それは準備不足が原因でしょう. 問題はその先です.質疑応答です.どれだけ上手に発表しても,質疑応答がダメだと評価は低くなります.口先だけで,内容を理解していないことが露呈してしまうからです.このため,質疑応

プレゼンテーション・アドバイス(6):発表本番時に守るべきルール

発表までに十分な準備をしてきました.いよいよ発表本番です.ここでは,発表本番で守るべきルールを示します. <発表のルール> 1) 発表原稿は見ない.もし持つなら工夫する. 2) 発表態度で好印象を与える. 3) 聴衆を見ながら話す. 4) ゆっくりと大きな声で話す. 5) 強調すべきところで強調する. 6) ポインターを振り回さない. 7) 時間を厳守する. このルールを守るだけで,拍手喝采を浴びるプレゼンにはならないまでも,目的を達成できいるプレゼンに近付きます.ここで

基礎研究の対極は非基礎研究じゃないの

私が大学院修士課程に在学していたか,あるいは修士課程を修了して助手(今の助教)になりたての頃,当時のボスから聞いて,とても印象に残った話がある. なあ,加納君,研究者って自分の研究を基礎研究か応用研究に分類しようとするものだ.でも,基礎研究の反対が応用研究か.そう思うか.本当は,そうではないだろう.基礎でないものは非基礎だ.応用でないものは非応用だ.世の中には,非基礎研究もあれば,非応用研究もある.で,加納君はどんな研究をするんだ.遠慮せず,何でも好きな研究をやったらいい.

Zoom講義の録画が怪しい

私はZoomでリアルタイムに講義を配信している.本当はそれだけにしたいのだが,学生のネット環境も様々だし,なにより録画した講義動画を視聴したいという学生からの要望があったので,講義の最初と最後の漫談だけはカットした動画ファイルを用意した. Zoomなので,共有している画面の他に,自分も映る.いい感じだ.キャンパスに来ることができない新入生のためにバーチャル背景を時計台にしていることにも配慮が感じられる.感じられるだろう.感じて下さい. それはともかく,この講義動画を見てみ

プレゼンテーション・アドバイス(5):原稿作成・推敲・練習・練習

前回,ようやくスライド作成まで漕ぎ着けましたが,発表本番までにすべきことが残っています.原稿の作成,原稿とスライドの推敲,そして練習です.今回はその重要性を説きます. 原稿を作成し,スライドと共に推敲する「スライド作成のルール」に従って,思い描いたストーリーに沿ったスライドができたら,発表原稿を作成します.「スライド作成前にすべきこと」を実行していれば,プレゼンテーションの目的は明確になっているはずですし,誰が聴いてくれるのかも把握できているはずですし,伝えたいことに優先順

何のために生きているのか,大学で学んでいるのかと問うクリシュナムルティの講話

このnoteでは教育や勉強のノウハウみたいなことをよく書いているが,今回は,もっと深く考えるために,1984年2月7日にインド工科大学(IIT)で行われたジッドゥ・クリシュナムルティの講話を紹介する. インド工科大学は,地域ごとにある理工系トップ大学だ.入学試験の競争率は恐ろしく高く,インド中から優秀な学生が集まる.卒業後にアメリカに行く学生も多く,シリコンバレーのスタートアップの多くに関わっている.そんなエリート大学生に,クリシュナムルティは以下のような話をした. 政府