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大学・大学院・教育・研究のあれこれ

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2020年4月の記事一覧

原稿提出前に,印刷して,声を出して読め!

研究室内では,そしてツイッターでも,散々繰り返して言っていることがある.ここにも書いておこう. 原稿を提出する前に,必ず,印刷して,声を出して読め. これだけで誤字脱字を含めたケアレスミスは確実に減る.話の流れが悪いところや意味不明になっているところに気付ける.そして,修正できる.その結果,自分の評価はあがる.ジャーナルに投稿する論文の原稿,国内外の学会に投稿する論文の原稿,修士論文や卒業論文,それらだけに限らない.記事であれ報告書であれ何であれすべて同じだ.もちろん,学

論文を執筆するときに注力すべきこと

学位を取るために論文が学術雑誌(ジャーナル)に掲載されれば十分ですというようなレベルの話が対象ではない.できるだけ多くの人に論文を読んでもらい,研究成果を社会のために役立てたいと願うときに,どのように論文を書けばよいかという話をしておきたい. まず,肝に銘じておかなければならないのは,ほとんどの論文は読まれないという現実だ.自分の専門分野であってさえ,論文数を稼ぐために論文が大量生産され,似たようなテーマの国際会議や国内学会があちこちで開催される現在,すべての論文に目を通す

経営者の条件 - 学生に読んでおいて欲しい本

原題は”The Effective Executive”であり,ドラッカーの著作であることから,これが「経営者の条件」と邦訳されたのだろう.だが,この邦題は誤解を招く恐れがある.というのも,本書の対象は決して「経営者」ではないからだ.組織において意志決定を行う知識労働者すべてが対象である. P.F.ドラッカー,「経営者の条件」,ダイヤモンド社,2006 今日の組織では,自らの知識あるいは地位のゆえに組織の活動や業績に実質的な貢献をなすべき知識労働者は,すべてエグゼクティブ

人生最適化の目的関数と制約条件

「最適に生きてるか?」とは,昔所属していた研究室でよく使っていた挨拶だ.プロセスシステム工学という分野だったので,何事も最適化する癖が全員に染みついていた. 最適化というのは,最大化または最小化したいもの(目的関数や評価関数と呼ぶ)を決めて,ある制約条件の下で,自分で変化させられる何かを変化させることによって,その最大化または最小化を実現する作業のことだ.すべてを数式で表現できれば,その最適化問題を計算機で解くこともできる. 幸福度を最大化しながら生きる何も難しい話ではな

目的と手段を取り違えないために

「四隅」を取ることを目指しすぎて,リバーシ(オセロ)で勝てない. 「飛車」を取ることに熱中するあまり,将棋で勝てない. そして,重箱の隅を突くような研究をする. こういう人は目的と手段を取り違えているわけです.ゲームに勝つことが目的だとしたら,そういう行為は控え目に言ってアホのすることです.でも,世の中,そんなアホみたいことで溢れています.なぜなのか. 目的があって,それを達成するために手段がある. そりゃそうだと思う人は,目的と手段を混同するなんてことはないですよね.

話し方入門 - 学生に読んでおいて欲しい本

デール・カーネギーの名著「話し方入門」には,人前で上手に話すための秘訣が書かれている.もちろん,単なるハウツウではない.人に伝えたいと切望するものがあること,周到に準備をすること,練習に練習を重ねて自信を持つこと,始め方と終わり方に注意すること,わかりやすく話すこと,そして,美しい言葉を身に付けることなどが挙げられている.人前で話すことの重要性を認識し,上手に話せるようになりたいと願う人にはきっと役立つはずだ. 先に,お勧めの書籍として,デール・カーネギー(Dale Car

自分の研究を位置づける

学会発表に加えて,修論発表や卒論発表など,学生であっても,自分の研究について発表する機会はいくつもある.就職活動でも研究発表を求められることもあるだろう. そういう発表において,もちろん,研究の背景,目的,方法,結果,結論を述べているはずだ.しかし,その背景や目的が,その発表の範囲内のものでしかなければ,不十分と言わざるをえない.もっと視野を広げて,先まで見通して,自分が今取り組んでいるのは,一体何を実現するためなのかを,研究の当事者として明確にしておく必要がある. その

論文を見付けて読む癖を付けよう

大学や大学院で研究を始めるにあたり,まずは自分がやってみようと思う研究分野の最先端を知っておく必要がある.自分で研究テーマを決める場合でも,教員から研究テーマを与えられる場合でも,それは同じだ.最先端の研究について知るには文献調査が不可欠になる.文献には,学術論文や特許など色々な資料が含まれるが,ここでは,論文と呼ぶことにしよう. パターンがわかれば難しくない論文を読むという作業は,特に最初の3報程度を読む作業は,とても困難なものになるだろう.見たこともない単語だらけである

人を動かす - 学生に読んでおいて欲しい本

自己啓発系の書籍で,私が心から素晴らしいと思っているのが,このデール・カーネギー(Dale Carnegie)の「人を動かす」だ.良い人生を送るために,どのように人に接するべきか.人を味方にし,友を増やし,心豊かな人生を送るために,どのように人に接するべきか.この本には,豊富な具体例を添えて,人心掌握の原則が書かれている.学生にも読むように強く勧めている本で,実際,読んだ学生からは圧倒的な支持を得ている.人生を変える一冊になるかもしれない. D・カーネギー,「人を動かす」,

アウトプットこそ成長へのカギ

私が実践してきて,これは効果があると確信している勉強方法2つを,お勧めする勉強方法として紹介した. 「お勧めする勉強方法1:自分の言葉で解説を書く」 「お勧めする勉強方法2:人に教える」 この2つの勉強方法には共通点がある.それは「学んだことをアウトプットする」という点だ.勉強はインプットだが,インプットするばかりではなかなか成果はあがらない.インプットしたものをアウトプットすることで,確実に自分のものとすることができる. 実は,大昔に実名でブログを始めた理由も,このア

Zoom遠隔講義動画のファイルサイズ

本日の「工業数学F2」は,リアルタイムにZoomで遠隔講義を行うと共に,その様子をZoomの録画機能で録画して,後から視聴できるようにする,というスタイルで実施した.学生が講義中にニコニコ動画のようにコメントを寄せられるようにしたのは,「遠隔講義で質問やコメントをもらう方法」に書いた通りだ. ここで紹介するのは,そのZoom遠隔講義動画のファイルサイズになる.今回の録画時間は約50分で,Zoomの録画機能で自動的に保存された動画ファイル(mp4形式)のサイズは88.1MBだ

遠隔講義で質問やコメントをもらう方法

リアルタイムに遠隔講義を行う場合,チャット機能を使って質問を受け付けることができる.学生にしても,教員の話を遮らずに質問できるので,質問しやすいだろう.当初はこれがいいと思っていたのだが,実際にはチャットの書き込みを見落としてしまうという問題がある. 今日の講義で,チャットより"Comment Screen"が良いと感じた. 「プレゼンをニコニコ動画みたいにする」で(使い方も含めて)紹介したアプリだ. 事前の準備はほとんど何もなく,講義の最初に2次元バーコードを読み取っ

お勧めする勉強方法2:人に教える

私自身が実践してきて,良いと確信している勉強方法の2つ目は,「人に教える」という勉強方法だ. 「自分の言葉で解説を書く」と「人に教える」は,非常に良い勉強方法だと思って実践してきた.テキスト等を読んで頷いていても本当に理解しているかは怪しいが,解説したり教えたりすれば誤魔化しは効かない.自分が何を理解していないかがわかるようになる.これが大切だ. 高校での勉強高校3年生だったとき,放課後にグループで勉強していた時期がある.誰かがわからないところがあれば,別の誰かが説明する

お勧めする勉強方法1:自分の言葉で解説を書く

以前,ある学生と就職や留学や研究について話をしていたときに,研究者としての基盤を築くための勉強の仕方が話題になった. 自分の経験から,勉強方法は人それぞれで,自分に合った方法を見付けるのが良いと思っている.それでも,中途半端な知識しか身に付けられない人が少なくないのも事実なので,私自身が実践してきて,良いと確信している勉強方法を2つ紹介したい. 1つ目は「自分の言葉で解説を書く」という勉強方法だ. 理解した気になっているだけ誰かが本を読んで何かを理解したと言っても,私は