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漢方雑談10/8の振り返りをします

10月8日(火)21:00〜
今回のテーマは、
「総合内科・総合診療科について」


総合内科・総合診療科ってどんなイメージ?

そもそも総合内科・総合診療科って名前に馴染みがないですよね?
名前だけでは実態がよく分からない・・・。
皮膚科、泌尿器科、小児科、外科、産婦人科や、
内科と言っても、循環器内科、消化器内科、呼吸器内科など、
病気の領域や疾患名がついている方が分かりやすいですし、
そちらの方が圧倒的に馴染みがあると思います。

実際に、医者の世界でも、総合内科や総合診療科と名乗っても、
「で、専門は何ですか?」と聞かれることが多々あります。
まだまだ、専門性が確立していないのが、大きな問題です。

総合内科と総合診療科の違い

『総合内科』は内科とついているので、幅広く「内科」疾患を診ていきます。総合内科専門医とは、内科領域全般における専門医です。
『総合診療科』は内科以外にも、小児科や救急科、地域医療などを経験する必要があります。総合診療専門医とは、内科だけに限らず、より幅広い領域をカバー出来る能力を有している専門医です。
名前は似ていますが、この守備領域の違いが、根本的な大きな違いで、専門医を取るための研修も異なります。

と言っても、医療者側にもまだしっかりと認識されていないので、一般の方にまで名称や診療内容の違いが浸透するにはこれからしばらく時間がかかるように思います。
そして、浸透していない&ロールモデルがいないことで、なかなかその領域を専門にしようという人が多くないのが現状です。
ただ、今後そのような医者が増えてくれることは、患者さんにとって大きなメリットがあると考えられます。

総合内科・総合診療科の医師が増えることで何がメリットか?

・何科に受診したらいいか分からない時、マネジメントしてくれる。
なにか体調不良をきたす症状があった時に、まず何科に行けばいいのか悩むと思います。しかし、総合内科・総合診療科は悩んだら受診することで、必要な対応はしてくれますし、専門医による診断や治療がならば必要な科へ紹介してくれます。
・一括で治療継続し、必要時は専門医へつなげてくれる。
高齢になり、いくつもの病気を抱えると、それぞれの病気に主治医が存在し、不整脈→循環器内科、血糖値→糖尿病内科、胃の不調→消化器内科、
腎機能が悪い→腎臓内科、耳鳴り→耳鼻科、尿のトラブル→泌尿器科・・・
と、一人の人が複数の科にかかるという問題が生じてきます。
高齢になると、そもそも複数の科に受診すること自体が負担になってきますが、一括で管理し、必要時には専門医への受診をつなげてくれます。
・重複が防げる。
一括で管理をしてくれると、処方薬の重複や検査の重複など、医療の無駄を削減することができます。

総合内科・総合診療科に求められること

このような背景から、どちらの領域にも共通して求められるのは、より幅広く患者さんを診察し、マネジメントする能力です(患者さんと話す能力だけでなく、各専門医との協調性も重要になります)。
専門化・細分化されたことで、医療は高度になり発達しましたが、それによって、前述したように、とにかくたくさんの科にかかり、主治医がたくさんいる状況が作り出されています。そこを横断的に診る役割が総合内科・総合診療科には求められていると思います。
また、専門医に受診したけれど、改善しない場合や、
原因不明の不調や倦怠感、食欲不振、やる気が起こらないなど、専門医をたらい回しにされてしまう状態の原因を探り、症状の緩和を目指すといった役割も求められています。

私のことを少し説明しておきます。

私は大学病院の総合診療学分野に所属していますが、
総合診療専門医は持っていません。総合内科専門医は取得しています。
その他に、糖尿病内科、内分泌代謝内科、老年病、高血圧、病態栄養などの専門医も取得しています。
なぜ、大学病院の総合診療にいながら、総合診療専門医ではないのか?
ですが、
総合診療専門医の養成は2018年から始まり、2021年度から認定者が少しずつ増えています。そして、総合診療専門医になるには、そのために新たに研修を3年間行う必要があります。
医師になり10年以上経っていた私がそれまでやってきたものを一度脇に置いて、新たに研修期間として3年間費やすのはハードルが高かった。のが、
総合診療専門医を取得していない理由です。

これからの病院やクリニックの選び方

この部分は、当日の話では一部しか触れていない部分ですが、noteに書く上で、少し内容を膨らませましたので、参考にして頂けたらと思います。
医師は、現時点では科を自由に標榜することが可能です。
そのため、内科医の私が明日から脳外科医を名乗ることも可能です(診療がしっかり出来るかどうかは問わない)。
よくある例として、外科や泌尿器科で病院に勤務していた先生が、退職し、開業するにあたり、その科だけでは集患が難しいそうな場合などに、
「外科・内科」「泌尿器科・内科」と掲げることがあります。
全てが悪いとは決して言いませんが、内科領域については内科でずっと研鑽を積んできた医師と比べると、診療精度が落ちる可能性が挙げられます。
では、どうしたらいいのか?
最近は、病院やクリニックのホームページが必ずありますので、そこからその先生の持っている資格や経歴を確認して下さい。専門医があれば、絶対に間違いないかと言われると絶対とは言い切れませんが、その分野についてはある程度の経験値があると推測出来ます。
たまに、所属学会が列挙されていることがありますが、それは年会費を払えば誰でも学会員になれます。
専門医とは大きな違いですので、惑わされないで下さい。

漢方薬と総合内科・総合診療科の親和性

原因不明の不調や倦怠感、食欲不振、やる気が起こらないなど、原因究明と共に、症状の緩和を目指す場合に、漢方薬は非常に力を発揮してくれます。
それは何故かですが、西洋医学は診断をつけることをまず第一とし、診断をつけて、それに対しての治療を考えていきます。
一方で、漢方や鍼灸などの東洋医学は、診断をつけることは必ずしも重要視しません。そのため、診断をつけずとも治療を行えます。これによって、幅広い患者さんの訴えを上手く緩和させたり、治したりすることが出来ます。漢方内科や東洋医学科が総合内科や総合診療科の一部として機能している病院もありますので、親和性の高さは広く認識されています。

最後に伝えたいこと(西洋医学と東洋医学のお互いを補完し合う)

漢方や鍼灸にエビデンスがないという西洋医学どっぷりの先生がまだまだたくさんいます。それはそれぞれの考え方なので否定はしません。ただ、西洋医学の指標で漢方や鍼灸を同じように評価すること自体が正しいのか、私には非常に疑問です。悠久の時を経て発展してきた東洋医学の考え方を決して否定せず受け入れ学び、西洋医学と互いの長所を補完し合う形が今後はますます重要視されていくと考えています。

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