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書評「1100日間の葛藤」あの苦しかった時代の振り返りは大事!

こんにちは、サカモトです。

さて今回はこちらの本、「1100日間の葛藤」の紹介です。

新型コロナの政府・分科会の会長を務めた尾身さんの著書です。


1100日間の葛藤


人間は忘れる生き物だから

人間は忘れる生き物である。そんなことを思う。

2020年の初頭から始まった新型コロナの騒動は、記憶に新しいところである。

その事実はみんな覚えていると思う。

しかし、あのときの世の中これからどうなってしまうんだろうと思われた当時の世の中の雰囲気は忘れているんじゃないだろうか。

少なくとも僕は忘れてしまった。

人と接触することがよくないこととされ、外出はしてはいけないとされ、入学式や卒業式など軒並みイベントが中止になった。

緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などで、県外への外出を控えるようにとされた。

今から考えるとあの一連の現象は何だったのだろうと思う。

当時の医療の状況を考えると仕方なかったと言えるとは思うものの、果たして当時のとられた対応は正しかったのか、きちんと振り返り、検証することが大事である。

この本は、政府の新型コロナ感染症の専門家会議で重要なポジションにいた尾身さんが自ら、検証したものである。


この本の素晴らしいこと

尾身さんの記憶力がすごいことである。

専門家会議で、たくさんの会議をしてきたはずである。

そうであるにも関わらず、いつの会議で誰がどのような発言をしたか克明に書かれているのである。

例えば、こんな感じである。

それは、共に世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局で感染症対策に従事し、国内でもこの分野で信頼が厚かった2人、押谷仁東北大学教授と、岡部信彦さんとの間であった。押谷さんが「ともかく感染のレベルを少しでも下げるべきだ」と主張すると、岡部さんが「いや、人々の日常の生活への配慮も必要なので重症化対策に力点を置くべきだ」と反論した。怒鳴り合いになり、片方が席を立つほど険悪なムードになった。

1100日間の葛藤

これはまだ新型コロナ感染症の対策がとられた初期の頃、2020年の3月の頃である。こんなふうに誰がどの会議でどんな話をしていたかが書かれているのである。記憶力良すぎでしょう。


また、分析も的確である。

最後の方は、専門家会議の対応の一つ一つがどうであったのかまとめているのであるが、その分析が的確なのである。

また、当時話題となったいくつかの問題についても分析している。

無症状者に検査は必要なのか、なぜ頻繁に医療逼迫が起こったのか、クラスター対策がどうして必要になったのかなどについて丁寧に答えているのである。

正直なところ、新型コロナの対応に当たる専門家会議のメンバーに尾身さんが、いてよかったと思う。

記憶力、判断能力が素晴らしい上に、コミュニケーション能力も高いときている。

逆に尾身さんがいなかったとしたら、新型コロナ対策はどうなったのだろうかと考えてしまうかな。

しかし、、、

しかし、一方で尾身さんは1949年生まれである。

2020年当時もうすでに70歳になっていたのである。

2020年2月から2023年8月の間の1100日の間に出した専門家会議の提言は全部で100を超えるそうである。

なんと、10日に1つのペースである。週に2、3回は会議を開いていたそうである。

さらに、本来はしないはずの専門家会議としての記者会見や首相の記者会見の立ち会い、国会への招致などもしていたという。

当時は未知のウィルスとの闘いという特別な時期とはいえ、いくらなんでも70歳過ぎの人をこれほどまでに酷使させていいわけがないと思ってしまうんだがね。



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