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銀行店舗なんていらない!?訪問客が激減するリアル銀行店舗、デジタル化の可能性
現金引き出しはATM、振込みはネットやアプリが日常的になり銀行に行く機会が激減しています。また、銀行側もそんな顧客の現状から店舗を減らし、オンラインサービスを更に充実させることで人件費をコストダウンして効率化を図っています。そんな背景から銀行店舗の新しいカタチを探り2014年に私(関戸)が実際にプロデュースした、スルガ銀行d-labo湘南T-SITEを紹介します。
銀行の敷居の高い姿を消し、目的が無くても気軽に行ける銀行へ
普通の銀行店舗はエントランス(出入口)があり、目的が無いと入れない敷居の高い印象がありますが、d-labo湘南T-SITEでは、多くの人に来てもらうため、境界を曖昧にして、周りのラウンジやビデオレンタルスペースから無意識になんとなく入ってしまうボーダレスな設計にしました。デザインもクラインダイサムが定義したT-SITE全体のトーン&マナーに合わせ、敷居の高いイメージのある銀行店舗の姿を消すことで、気軽に入りやすくしました。実際にオープンすると、銀行とは知らずに“ふらっと”来てしまう方が多く、たくさんのお客様が来店してくれました。
ユーザとの接点、コミュニケーションを生むためのデジタルを使った仕掛け
店舗スペースの壁側はセミナーで使用する大型ディスプレイをマジックミラーの奥に設置して壁と一体化したデザインにしました。また、そのディスプレイをセミナー開催時以外でも有効活用できるデジタルコンテンツをいくつか用意しました。中でもコマゲームが施設を訪れる多くのファミリー層を引きつけました。タッチ式のコントロールパネルで自分の好きなコマの絵を書いてインタラクティブに遊べる体験型コンテンツです。作られたコマの絵は保存されギャラリーのようにディスプレイに映し出されます。
子供が遊んでいると、その姿を見てもっと多くのファミリーが集まることもありました。そのようにして、お客様がこのコンテンツに興味を持ち、触れることで、銀行のスタッフが話しかけやすくなり、普段接点のない多くのお客様と自然にコミュニケーションができる機会になりました。
店舗のデジタル化=無人化=コストダウンでは意味がない
通常、銀行店舗のデジタル化と言うと多機能ATMやタッチパネルのシミュレーションディバイスなどを導入してユーザーに能動的に動いてもらうことで有人接客を減らしコストダウンしようとするケースが多いのですが、それでは、お客様が気づいていない潜在的ニーズを探ることが難しく、商品の提案力を活かせません。お客様が気づいていないニーズを顕在化し、お客様に合った提案をするためにはできるだけ、ゆるいところからコミュニケーションをはじめて販売する機会を増やすことが大切です。この店舗の場合は、そのためにデジタルを使いました。
目指したのは単なるデジタル化ではなく、デジタルとフィジカルの融合
デジタル店舗を設計する場合、サイネージやデジタルディバイスを置いただけで一体感がない空間。テクノロジーに寄り過ぎて落ち着かない、居心地が悪い空間を多く見ます。
この店舗を設計する際には、デジタルとフィジカルが一体的に融合された空間を目指しました。デジタル先進的でありながら、家のようにリラックスできるそんな空間です。湘南をイメージした植栽や石を入れるなど自然を取り入れた工夫もしました。
私たちは今後もこのように真のデジタルとフィジカルが融合を目指し、ヒューマンな店舗を作り続けます。