戦争以外にやることがない暇すぎる世界
シークレットレベルのウォーハンマー回を観る。
よくある3Dアニメーションの欠点としてカメラの動かしすぎというものが挙げられる。あのスピルバーグですらタンタンの冒険やレディプレイヤーワンなどの作品において無駄に長いワンカット長回しで何でもかんでも画面に映しまくり、臨場感を削ぐ演出をしていたりするのである意味それは3Dアニメに携わる者が必ず陥る宿命といえるのかもしれない。
実写の場合は撮影の段階で物理的な制約が課せられるため、何でもかんでも映すというわけにはいかない。昨今はドローン技術の発達でとんでもないアングルからの撮影は可能になったが、問題は被写体の方は依然として旧来的な手法で段取りを組まねばならないということだ。マイケル・ベイの映画がいい例で、複数台の車が爆発するシーンなどはその一台一台に対してそれぞれ振り付けをアナログな方法で行うというひどく手間のかかることをせねばならない。つまり複雑な構図のショットを撮る時はカメラをグルグル動かして長回しをし、何でもかんでも画面に映すなんてのはスタジオ撮影はもちろんのこと、ロケ撮影においても如何に緻密な段取りをしようと不可能に近いのだ(無論VFXを用いれば可能ではあるが、だからといって下手な使い方をすると途端にチープな画ができあがってしまう。ルッソ兄弟のグレイマンとか)。
さて、3Dアニメにおいて、そのようなアナログ的制約はあまりない。もちろん水の描画といった処理速度等の実写とはまた違った制約も存在するが、カメラの位置や被写体の振り付けであったりといった実写における一番めんどくさい部分における縛りというのはかなり緩くなっている(はず)。
そのせいか見せなくていい部分を見せ、画面内で起こっていることに対する神秘性を失わせることで臨場感を削いでしまう演出が多かったりするのである。
そしてこのウォーハンマーもそうした宿命からは逃れられなかったように見受けられる。
例えば生体ユニットを収納した棺桶みたいな箱を引きずって斜面を滑り降りる兵士を斜め後ろ45度から捉えたショットがあるのだが、それもアングルや照明や人物の動きのせいなのかチープな感じの演出となっている。おそらく実写でやっていたらこんな安っぽい見せ方はしなかっただろうと思う。カット割るとか、そもそもロケーションの形をもっと改善するとか、そんなショットは入れないとか(あるいは編集の段階で切るとか)、そうなっていたのではないか。
スペースマリーンがドカドカ無双するシーンは楽しいし盛り上がるので、これはザック・スナイダーに作ってほしかったと思うのであった。
あの人なら完璧な照明の当て方でえげつない陰影をつけ、バキバキに決まった流麗な構図と壮大な音楽で盛り上げてくれるはずである。
なので今ヘンリー・カヴィルが企画しているウォーハンマーの監督をザックがやってくれないかなあとぼんやり思ったりしたのだった。