『破墓』を観る。
俺はホラー映画が苦手だからあまり観ないようにしている。
怖くて泣いちゃうからだ。
んで、そんな俺がなんでパラサイト超えの韓国No.1ヒットホラー映画を観に行ったのかというと、それはパラサイト超えの韓国No.1ヒットホラー映画だからだ。
中盤までは怖さのあまりずっと涙目で観ていた。
俺にとって一番怖いものとは、得体の知れないものだ。底知れなさ、不気味さ、不可解さ。そんな「わからない」ものがひたすらに怖い。
この映画は中盤に至るまでの「わからなさ」の演出が卓越している。
事の発端となる墓がある山の不気味さから始まり、墓の簡素さ、謎の緯度と経度、人面蛇、怨霊の暴走からの一件落着──と思わせてからの垂直に重葬された謎のクソデカ棺。徐々にヤバさを積み重ねていくことで醸成される不気味さがここで最高潮に達し、ただひたすらに「わからない」ことが恐ろしい。
正直あのクソデカ棺が出てきた時の衝撃だけでも、映画代を払う価値がある。
個人的には、もうあそこで終わってもいいと思ったくらいだ。そうなったら恐らく絶望的な気分で劇場を後にしていた違いない。
とはいえ、基本的に商業作品はヒットさせねばならん宿命にあるため、そういうスッキリしないオチはあり得ない。最終的にはオチをつけねばならないのだ。
そこからは霊幻道士的な流れになっていくのだが、その恐ろしさは霊幻道士の比ではない。
やはりなんと言っても特筆すべきは鬼のビジュアルである。現代において鬼というワードを聞くと、「鬼(笑)」と言うリアクションが飛び出そうだ。鬼というのは歴史の中で擦られまくっており、今や因習村だの祠破壊だのと同じくらいクリシェ化しているように思う。
だがこの映画の鬼はそんな先入観を真っ向から破壊してくる。ホラー映画における幽霊やら怨霊というものは、全体像が画面上で露わになった時点でその怖さを失してしまうものだが、この映画はそうした愚を犯さない。どんな状況であっても、常に焦点をずらしたり、物越しに被写体を映すレイアウトや影を強調するライティングによって、その正体を正確には捉えられないように仕向ける工夫が凝らされているのだった。
無論中盤までの「わからない怖さ」には及ばないが、それでも最後まできっちりと観れる作りになっているのは見事だ。
なので観ろ。
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