
俺はハンター
クレイヴン・ザ・ハンターを観る。
公開直後から散々にこき下ろされているのを見て来たので、期待値ゼロで行ったら意外と楽しめた映画である。
前にも言ったと思うが俺が映画に要求するのは気を散らさず観ていられることであり、観ている間「ふーん」といった感じでのんびり観ていられたので「まあまあ良かった」という評価に着地した。やはり映画というのはそれなりの額の金と面のいいスターを起用して大画面で観るとけっこう保つものである。多分家で観ていたらスマホをいじっていたに違いない。そういう意味で映画館の魔法によって支えられたような映画であった。夜の劇場には俺一人しかいなかったこともその評価に寄与したかもしれない(スクリーンを一人で独占できる機会ってのはなかなかないからね)。
ただ「楽しかった」であり、「面白かった」ではないことに留意されたし。
見えてる地雷に物言いする無粋をあえて犯すなら、やはり筋書きには少し文句を垂れたいと思う。
というよりもこの映画には筋というものがない。それはすなわち映画に一貫性がないということだ。俺はおバカな映画は大好きだが、さすがに一つの軸が通っていない映画を観るのはいくらなんでも苦痛である。
例えばアーロン・テイラー・ジョンソン演じるクレイヴンのキャラクターも、彼が弟想いなのは分かったがその人生において何をハントしたいのか(動物なのか悪い人間なのか)ということがイマイチ掴めないので彼がどんな人間なのかがふらふらしていると思った。
ストーリーテリングも最低限にすら到達していないのでひたすら「ふーん」の連続である。
アクションシーンはけっこう頑張っているが、ダイアローグのシーンになると途端に切り貼りしたような切り返しが多くなり、目がめちゃめちゃ疲れる。無駄な長回しは嫌いな俺だが、工夫のない切り返しも嫌いである。これがマイケル・ベイならカメラをガンガンに動かして逆光に次ぐ逆光の連続で場面を保たせていたはずである。
これがソニーによって再撮影やら編集やらと継ぎ接ぎされた結果だというのは聞き知っていたし、観ていてもなんとなくわかった。
なのでもしもSSUを再開した暁にはソニー先輩は監督に干渉するのはやめ、もっとのびのびと映画を撮らせてほしいものである。
個人的には、森で仲良くじゃれていた豹を密猟者かなんかに殺されたクレイヴンが怒りに燃えてジョン・ウィックと化し、プレデターも涙目の残虐ブルータルジャングルキルの連続で密猟者集団を追い詰めていくアンチヒーロー的なものが見たい。
どうです?ソニー先輩。