剣闘士の映画
グラディエーターⅡを観る。
リドスコおじいちゃんが大暴れ。
日頃「自分巨匠ですけど」みたいな面しておきながら、どう考えても御年87歳になろうかというジジイには似つかわしくない勢いで爆走する様には感心する他ない。
冒頭、「これまでのグラディエーターは」と言わんばかりに前作を大まかに振り返るあらすじアニメ(スコットフリーのロゴのアニメーションを作った人が手がけたそうな)が流れた後、「GLAD“Ⅱ”ATOR」(!)とドヤ顔でドロップしたタイトルにテンションが爆上げである。かっこよすぎるセンス……伊達に7年間美術学校に通っていなかっただけのことはある。
その後怒涛の勢いではじまる合戦シーンもマイケル・ベイの最後の騎士王に負け劣らぬオラオラ感で展開される。この人はあいからわずショットすべてに力が入っていて、見ているだけでも楽しい。カタパルトから打ち出された燃える壺がガレー船にぶち当たって爆発炎上する様をパララックスで抜いたショットはクールでありながらもやはりずっしりとした重さを感じる。特にバリスタで串刺しにされた兵士が城壁に固定される一連のシークエンスが無駄に勢いがあってよい。この映画はかなり大衆向けのスペクタクルに寄っており、このギャグスレスレのバリスタの描写それを象徴しているように思う。
また、服飾建築等々の造形も凝っていて、正直そのへんのアート気取りの映画よりもよっぽどアートしているように感じる。
俺はローマとか全然詳しくないのだが、ちょっと調べただけでも歴史考証的にはかなり適当だということがわかった。そもそもアカシウスなんて人は存在しないらしく、マクリヌスも皇帝になってから1年ほどは生きていたようだ。少なくともあんな形で死んだわけではないらしい。何よりコロッセオに水張ってサメを泳がせてたわけがない。それになんだあの犬猿は。毛でも刈られてんのか?(追記:毛を刈ったヒヒだそうです)
とにもかくにもリドスコ動物園である。サメをリドスコが監督するとこうなるのだろう。
だが「嘘ばっかじゃねえか!」などと言うのは少々無粋に思える。無論専門家が誤解を解くために言及するのは分かるが、それ以外の歴史的事実云々で発狂する人間は映画など観ないほうがよいと思う。
そもそも映画とは演技つけたりセット組んだりしてる時点で完全に虚構であり、作り物なわけで、言ってしまえばそれは全部ウソだ。ウソに対して「これはウソである」と言うことほどしょうもない物言いもない。
特にリドスコなんぞはビジュアルの人なわけで、そんな人がローマを作るとなると史実よりも視覚効果優先になるに決まってる。
良くも悪くもアバウトなエンタメ映画であった。