三丁目が戦争です
シビルウォーを観る。
すごい、109分の映画にもかかわらず、1時間くらい無駄なシーンがある……。
とりあえず「監督が一番やりたいことはトランプ批判だな」と感じた。しかし「独裁者をぶち殺せ!」というメッセージを発信することに躍起になるあまり、他の部分が疎かになってしまったように感じる。
トランプ批判がしたいならザボーイズ並みにイカれた直球でやらねばインパクトがないし、内戦の姿を描きたいのなら、呑気な兵士たちを出すのではなく、プライベート・ライアンに倣うなどしてリアルタイムで死体の堤を築くべきであったような気がしてならない。
今まさに分断されようとしているアメリカが製作した内戦映画なのだから、そのような作品を期待していたわけだが、果たされなかった。
結局出てきたのは「内戦観光旅行」とでも言うべき戯画化された代物である。たしかにジェシー・プレモンスはいい演技をしていたが、それ以外の、例えばサンタクローススナイパーなどのシーンがまるで必要なかった。
やはり観客(俺)としては、全編人がバタバタ死んでいく様が見たかった。そのようなリアリティあってこその現実社会への警鐘ではないのか?この映画はそうした凄惨な描写を日和っていては成り立たないコンセプトであるにもかかわらず、そこから目を背け、戦場カメラマンの成長物語に逃げてしまったところに敗北の要因があると感じる。
また、この主人公の成長物語にしても、あまり筋が通っているように見えなかった。「始めは死体にビビっていた主人公の肝が座る」という流れも、単純に戦場に慣れてしまっただけのように感じた。女師匠が死ぬ際にシャッターを切り、その姿をフィルムに収めようとするが、これも「成長した!」という様を描いたわけではなく、むしろ「いい写真が欲しい。だからわざと危ないことして誰かを嵌め、撃たれてその生死が切り替わるあわいを撮って特ダネにしよう!」というナイトクローラーの主人公みたいな邪悪な方向の才能が開花したようにしか見えない。
ただ、最後の戦争シーンは大迫力だったと思う。銃声の音響が素晴らしく、ビビリな俺は発砲の時に「ビクッ!」としてしまった。また、投降しているにもかかわらず平然と撃ち殺されるところも恐ろしい。
これを二時間続けてくれれば言うことはなかった。マイケル・ベイは、ハリウッド映画としては比較的低予算の50億円程度で13時間を撮ってみせたため、「予算がない」などという言い訳は通用しない(!)。またあのような、ずっと撃ち合い、人の腕が千切れ、子どもがバラバラになる等々の悲惨な状況を扱った映画でも楽しく観れるエンタメに仕上げることができるのだから、やってやれないことはなかったはずだ(いや、単純にマイケル・ベイが天才すぎて真似できなかったのやもしれぬが)。だからそうした方向に舵を切ってもよかったと思う。
というわけで「いかにエンタメといえど日和ってはいけない部分があるのだ」というのが、この映画に対して俺が言いたいことである。
追記:ただケイリー・スピーニーはかわいいなと思いました。
終
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