【凡人オブ凡人とは】 舞台『滑走路』
私は、会社員をしたことがない。会社員になる才能がないからだ。
だから、会社員の方々を尊敬している。高校ですら自分の好きな授業以外は起きていられなかったのに、毎日ちゃんと会社へ行き、仕事をちゃんとこなすなど、才能以外の何ものでもない。
そして、大きな物事を成したいなら、会社という組織が無ければならない場面は多くある。会社のみが世界を動かしているわけではないが、会社がなければ動かないものもある。
それらの事業に携わりたくて会社の一員になっている人は多くいるはずで、それらの人々をも、私は尊敬する。
理不尽なことは、会社だけではなく社会全般に存在する。そしてそれぞれの立場で、溜飲を下げねばならない場面と対峙する。ではそういった事態に直面した時、人を前に向かせるものは何だろう。私はそれが、「夢」だったり「浪漫」だったりすると思う。
そして、それを説教ではなく伝えてくれるものが、エンタメなのだ。「エンタメは衣食住ではない」けれど、子供だけでなく、大人の目もキラキラさせてくれるのは、エンタメの力だ。
衣食住のどれかが欠けている時でも、人はエンタテインメントに救われる。だから人は歌うし、踊る。だから人は、極寒の中でも洞窟に絵を描く。その意味で、エンタテインメントは、衣食住と並んで、人に必要なものなのだ。
そんなことを、「普通の」「何も特別なことが起こらない」お芝居を通じて改めて思った。
そして、実は我々はもっと本音で会話しても良いのではないか、ということも。
「アムロ」の本音を周りは驚きはしたものの、当人を否定することは無かった。「こんなことを言うべきではないのではないか」と慮るあまりに、人は自分に嘘をつく。それがいきすぎてしまうと、誰とも本音で話すことができなくなってしまう。
ずっと一緒に働いている「会社」というチームの一員だからこそ、本音で話しても周りがちゃんと理解してくれる。一般的な考えの真逆のようだけれど、それもまた真理ではないかと思う。
ところで…
一緒に観劇していた会社員2人が刺さったセリフを聞いて、会社員の方々は自分の仕事をクリエイティブではないと思っているのか、と驚いた。声を大にして言いたい。いえいえ、あなた方のお仕事はクリエイティブで、それを組織の中でやっていることが、私の尊敬ポイントなのです、と。
セリフで「西田敏行」と出てきたことのタイムリーさに一瞬思考停止した、スーパームーンの夜の観劇。
私は、私の周りにいる人たちに手を引かれながら、世界を一緒に回している凡人オブ凡人だ。
明日も良い日に。