【人間関係の湿度とは】 oubaitori企画 『かもめ2024』
コンパクトなチェーホフでした。
ってチェーホフが1幕ってすごくない?!いや、1幕ってったって2時間20分あるんですが、体感的にはその長さには感じませんでした。
上演時間が長いことで滲み出てくる「人間関係のうだうだ感」の代わりに、狭目の劇場空間だからこその「小さな村社会」の関係性がありありと立ち上がっておりました。田舎の距離感って、確かにあれくらいの肌感覚です。極小な中で、人々は生きている。
上演時間が濃縮されたことによる湿気の無さもありました。チェーホフの湿気は、ある程度の長さがある中で展開される、人間のぐだぐだと続く語らいによるのかも知れません。
1幕ものになったことで、登場人物の中にもジメジメが薄まった人がおりました。例えばアルカージナは、自我のはっきりとした肝っ玉女優に見えました。ジトジト感が少なくて、カラッと目のはっきりとした物言いの風通しの良いお母様。パパッと進むことも一因のように思います。
全体的な湿気の低さに加え、あの空間だからこそ、1幕でのコースチャの、舞台の門戸の開かれ方についての一連のセリフがグッとくる。舞台は、大劇場のためだけのものではないのです。
誰もお互いのことを聞いていない、自分のことに其々が夢中な感覚は維持されつつも、ドクターとアルカージナの周りに対する目線に温かみがあり、我が儘オンリーではないが故に、今まで感じたことのないチェーホフ体験となりました。
演出と脚本の編集で、こんなにも見えてくる世界が違うのだ、としみじみ思いながら帰宅しました。
明日も良い日に。
いいなと思ったら応援しよう!
言葉は言霊!あなたのサポートのおかげで、明日もコトバを紡いでいけます!明日も良い日に。どうぞよしなに。