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329/366 【芝居モンスター】 1人芝居 「フリー・コミティッド」
舞台はクリスマスも迫りつつある、ニューヨークのとある人気レストランの地下にある、予約受付オフィス。同僚2人がめいめいの理由で到着しないのに、朝から電話がバンバン鳴る。それらに一人で対応するサム。
初めは、いつもは使わせて貰えないハンズフリーのマイク付きヘッドセットを使えるのが楽しいが、そんな些細な喜びはすぐに吹き飛ぶ。
超VIPのお客様の我がままは何とか通さなきゃならない。
同僚が書き忘れたザガット(ミシュランみたいな飲食店評価機関)の偉いさんの予約の尻拭いもしなきゃならない。
「いつのご予約ですか?」「4人じゃよ」なんていう会話が成立しないご高齢のお客様もいる。
その合間にシェフからもテーブルサービス担当者からも次々と連絡が入る。いやいやそれは僕の仕事じゃないっしょ、みたいなものまで。
おまけに賄いは他の人に食べられちゃう。
僕、役者なのに。
なり続ける電話の合間に何とかタレント事務所に連絡しても、最終オーディションの話はまだ来ないと言う。
何で僕ばかりが。
そんな思いを飲み込んで、全てに誠実に対応する彼の耳にクリスマスキャロルが聞こえてくる。その度に、色んな形の福音も舞い降りる。これはサンタさんからの贈り物?
真相は誰にも分からない。
でも、最終的に、世界はプラマイゼロになるように出来ている。見ている人は、見てくれている。
自信満々に見えるシェフも、自分の腕に不安を抱えてる。事務所の社長も、役者のことを気にかけている。みんな、色んな思いを日々お手玉してるものなのだ。
***
開演前はお客さん同士、ぺちゃくちゃ話していたらいいだろうと思うんですけど、この時期なんで、控えて頂いてます。だから、僕が前説として出てまいりました
いや、贅沢すぎるやろ成河さん!
開演前なのにトコトコ舞台に出てきはったから、何事かと思いますやん。
落語家よろしく、舞台に正座してのマクラを始めるんですぜ。贅沢すぎる。
ってか、これからあなた、1時間50分、一人芝居やるんですよね?体力温存とかしなくていいの?!
勝手に心配しましたが、幕が上がればもはや世界は彼のもの。たった1人で38人を演じ分けるとか、カメレオンにも程があろう?!
ずっと1人の役者さんしか見ていないなんて全然思えないほど、舞台には38人全員がいた。途中切り替わっていることすらも忘れていた。だって、みんな違う人だったんだもの。ビリーミリガンも真っ青だ。
ちなみに、題名の「フリー・コミティッド」はfreeのフリーではなくて、fully committed。
今で言うなら、全集中みたいな言葉。
38人に全集中な成河さんもそうだし、
サムも電話の相手に全集中で対応する。目いっぱーい、手いっぱーい。
今この瞬間に全集中すること。
役者さんを見ていると、いつもそれを身につまされる。
Am I fully committed to the life I'm leading?
明日も良い日に。
公演は今月末まで。チケットまだあるみたいです!
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