【花の種とは】 劇団おぼんろ 「月の鏡にうつる聲」
末原拓馬meets 浦沢直樹作「PLUTO」のような物語だった。
妬み嫉みって人間に備わったバグみたいなものだと思うのだけれど、それと同時に、歌い踊るなど、一見何の役にも立たないように見做されるバグ的機能も備わっている。
それなら、歌い踊る方を、バカみたいな能力の持つ力を、私は信じたい。歌い踊っている間は、誰も殺し合おうとはしないだろうから。物語に魅了されている間は、誰かに対する憎しみを忘れているだろうから。
スピードとか効率とか、コスパとかいう言葉に振り回されて、我々はどれだけのことを見逃しているだろう。それで、どれだけ大切なものが、指の隙間からボロボロとこぼれ落ちていっていることだろう。
ラストシーンがあまりにも美しかった。血飛沫と花びら。時が経つにつれ、人の動きとともに舞い上がる花びらの数も、血飛沫の量も増えていく。それでもある人は踊り、ある人は戦い、その泥濘に倒れていく。太鼓の音が轟く中で。
月を鏡にして、遠い誰かに語りかける。そういう心持ちになれる相手が増えれば、ひとりぼっちは減るのかも知れない。
縦横無尽に移動していくプレイングエリアも圧巻で、お衣装も美しくて。
お伽噺ゆえの残酷さもあって。
あっという間の2時間半だった。
これまでのおぼんろさん作品は以下。
末原さんの一人芝居も、いつか再演してほしい。
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