古兵(ふるつわもの)たちを偲ぶ旅に出たはずが、現世の勇に導かれたこと
マイルの期限切れが迫っていることに気づいたのは、朗読劇が終わって腑抜けていた3月末の某日のこと。
ギリセーフとは言え、あと数日で、国内での訪問先を決めねばならない。しかも4か所。
脳裏にふって湧いた場所の一つが香川だった。
帰省の際、いつも通過するだけの県である。
そうだ、島旅しよう。直島とか小豆島とか。行ってみたい島が香川には沢山ある。
そして、「香川、島」で検索していたわたしは発見してしまったのである。
かの源平の戦いで一大ターニングポイントとなった
屋島
の存在を!
そうだ、屋島行こう。「われもか?」とお尋ねになられた、あの可愛らしい安徳天皇が御所を構えた屋島で、古兵に想いを馳せよう。
泊まるならば温泉が良い。琴平温泉ならば翌朝金比羅山にお詣りできる。そうだそうしよう。
ここまで決めるのに15分。なんてったって、時間がない。3月31日を過ぎてしまったら、折角のマイルが海の藻屑と消えてしまう。
そんなこんなで迎えた2年ぶりの羽田空港。感涙に浸る間など微塵もなく、最奥にある高松行きのゲートに走りまくり、ギリギリセーフで飛び乗りました。
到着した高松空港。香川初上陸〜
そのままリムジンバスに乗り、高松市内経由で屋島へ向かいます。
ところで、屋島の戦いは、海上戦。陸路で行けるって不思議じゃありません?
当初私は橋でも渡るんだろ、くらいに思ってました。
…違うんです。屋島は、なんとなんとの
山
なんです。#「し」どこいった。
正確には、源平の頃は島だったのが、麓が埋めたてられて地続きになったとか。
こちらの登山道は、弘法大師さん縁の道且つお遍路さんの84番目の札所、屋島寺へ向かう道。
よって、舗装もしっかりしています。ありがたや。
あちこちの木に箒がかかってます。参道やけんね。
食わずの梨。嘘はいかんよ、のお話。
小一時間のハイキングの後に…
着いた!
旅の無事を祈ってお詣りしてから、更に先へてくてく。
壇ノ浦の戦いの後、源氏が刀についた血糊を洗った池に到着です。
弘法大師さん的には、龍神が宝珠を奪いにくる池だそうな。今は長閑に時は過ぎゆく。
山頂の展望ポイントからの眺め。
矢印形の半島の向こうの入江が、舟隠しの湾。迫り来る源氏を海で挟み撃ちにしようと、平家はここに船団を潜ませます。
義経はその裏をかき、真裏の海から屋島に攻め込み、勝利を納めます。
黒字の矢印は、那須与一がひょうふっと射た矢が見事に扇子に当たった場所。
時は合戦の日の夕刻。その日の戦いが終わろうとしている頃。小舟に乗った平家の美女が扇子の的を射よと挑んでくる。当初は畠山重忠に白羽の矢が立ったものの、彼はそれを引き受けず。
何人かたらい回しの後、那須与一が担当になり、見事に射抜くことができました。
その腕を讃えて舞を舞い始めた平家の者らを、義経は更に射よと命じます。うん、あの義経にそんな雅が通用するはずはない。菅田将暉義経が無感情で命じる姿が目に浮かぶ。
赤いハートは、安徳天皇の社の辺り。
他にも出陣に向け、義経が鞍をかけた枝とか、屋島の戦いで義経の身代わりになって亡くなった佐藤継信のお墓なとがあるようですが、迷子になる未来予想図が立った為、断念。
でもそのお陰(?)で少し時間の余裕が出来た為、そのままことでんに乗り、栗林公園へ。
ところでこの公園。りつりんこうえんと読むことを今回初めて知りました。#どう見てもくりりん公園
左側がことでんのことちゃん。かわええ…
ザクザクと入った栗林公園は、翠が滴るようでした。
キレイやなあ…とホゲホゲしていたら、ランニング姿のおじさんが目の前の松のお話をしてくれました。
こちらは雌蕊についた松の花。雄蕊の方が背が低くて、もっさりしてる。
アカマツは肌が白くて女性松。葉っぱも柔肌。クロマツは肌が黒くて、葉っぱもトゲトゲしています。男松。見た目では判別不可能。触ってみると分かります。
逐一おもしろかったので、はーとかほーとか反応していたら、なんとこの方、公園のバイリンガルボランティアガイドの方で、ご厚意で園内をご案内して頂くことに。
くるりんくるりんな松の影がキレイだなあ、と思っていたこの小径。
お気づきでしょうか?左右で柵の形が違います。右側の槍やりしている方は、侵入禁止を表すもの。
左側の丸みを帯びた柵は、結界を表しており、入るか否かは、あなたの心に任せます、の意味があるそうな。
侘び寂びとはこのことだ。
獅子の岩。獅子身中の虫、と言いますが、その心中の虫を駆逐できるのは、ぼたんの花の夜露のみ。よって、この獅子の岩の川向いには、ぼたんの形の岩があります。牡丹の岩は本当にお花みたいな形をしていました。自然の形でああなるなんて、不思議。
虎と竹林も同じような組み合わせ。
他にも、カキツバタが咲いている川面付近には八橋がかかっています。
平安の歌人在原業平の、「からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ」と、カキツバタの頭文字を使い、八橋の橋の上から歌ったから。
話しに夢中で写真失念。くっそうくっそう。
借景が見事。
歩き進めるごとに景色が変わるお庭には、時間泥棒も暗躍していたようで、2時間があっという間に過ぎました。
閉園時間が迫っていたことからお茶室に入れなかったことが心残り。お船の船首みたいな軒先があるのです。
必ず再訪することを誓って園を後にしました。
と、Mさんが口を開きます。
Mさん「ところでこれからどうなさるんですか?」
私「これから琴平へ移動します!」
ただでさえ本数が少ないことでん。次の電車の発車時刻まで後10分。やや慌てるMさん。
「お連れします!」
Mさんに早足歩きで連れて行って貰わなかったら、絶対に間に合わなかった電車に乗り、私は次の目的地へ向かったのでありました。
なんとありがてえ… としみじみしながら目線を上げるとそこに並ぶは香川弁の数々。
わでもよく、おらっびょる。
段差の無い緩やかな道でどせこむ中年。それがわたし。
迷惑にならんよう、なるべく身体をこんもにして生きとるつもり。
次回Mさんにお会いすることがあったら、あれこれ使ってみようと思います。
明日に続く。
言葉は言霊!あなたのサポートのおかげで、明日もコトバを紡いでいけます!明日も良い日に。どうぞよしなに。