【悪い男の抗い難い色気について】 9月大歌舞伎第三部 「東海道四谷怪談」
首がとんでも動いてみせらあ
四谷怪談って、こんなに小狡いワル男が大盤振る舞いなお話だったのですね。そりゃこの恨み、果たさでおくべきやってなるわ。お岩ちゃん(玉三郎!)、可哀想すぎる。
なんせ旦那の伊右衛門(片岡仁左衛門!)ときたら、お岩の父の仇を打つと約束したのに、赤ん坊が生まれるとウザくなってお岩ちゃんへの気持ちも冷める。ワル男1−1。
そんな中、産後の肥立ちが悪いお岩ちゃんのお見舞いに隣家の伊藤さんからお使いがやってきて、借金の手助けをしたり、お岩ちゃんにお薬を差し入れする。
隣家は元主家が敵同士(多分)。よって伊右衛門は助け舟に礼を言いたくはないのだけれど、お岩ちゃんに行けと言われて渋々行く。
その伊藤家は伊藤家で、そこの翁ときたらまあ、伊右衛門に惚れてしまった孫娘のお梅可愛さに、お見舞いの薬と偽ってお岩ちゃんに毒を盛る。ワル男2。
伊藤翁に押し切られたフリをして伊右衛門はお梅ちゃんと内祝言を上げることに同意する。
オイ、お岩まだ生きとるぞ。
一旦お家へ帰った伊右衛門は、お岩と赤ん坊の着物を剥ぐが、それでは足りずに蚊帳もはいで質草にする。ほら、新生活には色々と入り用だから。
蚊帳だけは... とお岩はすがるが、それをものともせずに出ていこうとする伊右衛門。蚊帳から手を離さないお岩がズルリズルリと引きずられていく。これが凄いのです。
実際には玉三郎さんが動いているのに、ずるずる引きずられていくようにしか見えない!フォと変な声が出た。
挙句の果てに、新妻を家に迎えるためにお岩を追い出さねばならなくなった仁右衛門は、お岩の面倒をみてくれている按摩さんに間男を演じろと脅す。間男おったから妻を勘当したんだぜ。だから二股なんてかけてねーぜってことなのだ。
伊右衛門の悪事の反射神経パネエ。
結局あんまさんは間男になり切れず、彼の口から事情を知ったお岩は、醜い顔にお歯黒を施し、髪の毛を梳いて整えようとするけれど、その髪がどんどん抜けていく。薬でただれた顔はどんどん醜さを増していく。綺麗な人が醜くなった時のど迫力たるや。良い子は見たらあかんやつ。絶対夢に出る。
それでも伊藤家に恨み言を言いに行こうとするお岩ちゃんを止めようとしてすったもんだした挙句、お岩ちゃんは弾みで刀で喉をついて寝所で死んでしまう。
ちょっと中略するけれど、伊藤家から帰ってきた伊右衛門は、何の躊躇もなくお岩の死体を片付けて、そのままおうちに嫁を迎え入れ、さっきお岩が死んでいた寝所にお梅を向かわせる。
伊右衛門、鬼畜か?
結局お梅も伊藤のおじいちゃんも、お岩の恨みで殺されて終わるんですけど。
伊右衛門は生き残る。
ひょえー、マジか。
でもね、一番怖いのはね...
仁左衛門さまが色っぽすぎて、伊右衛門に死んでほしくないと思ってしまう己の心
です。
男としてクズなんです。間違いなく。
でも、仁左衛門の声をずっと聞いていたくて、ついついお岩、ヤメロ!そいつだけは生かしといてつかあさい、とつい思ってしまう。誰の味方だ、我。#仁左衛門ですごめんなさい
仁左衛門さんがやると、クズな男なのに、品があるのです。品があるって、物凄い色気。
玉三郎さん目当てでいったはずなのに、おかしいなあ...
最後は、一瞬とはいえ義母だった女性まで足蹴にして川に流すんですよ、伊右衛門はん。お前、どんだけ悪やねん。
これからコンビニでお茶コーナーに行くたびに思い出すことでしょう。
3部だけは完全に売り切れ状態だったのに、神と仏の御加護によってチケットが舞い込んでまいりました。O村さん、本当に本当にありがとうございました!
眼福、耳福でありました。
明日も良い日に。