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耳鳴り潰し298(映画「仁義の墓場」)

 洗い物をしている際に動画視聴体勢を整えて映画を観ているが、水音と小さい声での台詞が被ると聞き取りにくい場合がある。以前買ってほとんど使っていなかったBluetoothスピーカーを発掘して使用(ダイソー500円)。スマホの音量より大きくなり、洗い物の最中でもより楽しめるようになった。

 というわけで「GONINサーガ」の後でさらにヤクザ映画成分を摂取したくなり、深作欣二監督「仁義の墓場」を観た。実在したヤクザ石川力夫の生き様を描いたもの。視聴後にWikipediaで制作時のエピソードを読むといろいろ興味深いものがわんさか出てきた。
・脚本家が半年かけて作っていた脚本を、監督とその懇意にしていた別の作家で1~2週間でほぼ改稿して別物に仕上げた。
・主演の渡哲也にとっては病気療養からの復帰作であったが、無茶なスケジュールでの撮影で再び体調を崩し、入院する。病を押して撮影した渡の迫力が画面に滲み出ている。

 などなど。

 特に書くこともない日だったので、このまま「仁義の墓場」について書き続ける。

 実在の人物についての映画ではあるが、詳細全て明らかになっているわけではないから、当然フィクション要素もかなり混ざっている。それにしても無茶苦茶な人物である。不要な争いをし、親(組長)に叱責されても繰り返す。酔って親に斬りかかる。

 その後逮捕され服役。親殺し未遂という、ヤクザ社会で許されない罪を背負った石川は収監中も命を狙われ続ける。釈放後、兄弟分の今井の助けもあり、大阪へ逃れる。服役中に、「関東10年所払い」の触れが任侠社会に廻っていたため。

 大阪でヘロインの味を覚えた石川は、そこで出会った小崎(田中邦衛)と意気投合し、一年も経たぬうちに東京へ舞い戻り、賭場荒らしを始める。再びかくまった今井も辛抱しきれずに石川へ苦言を呈したところ、石川は兄弟分であり恩人でもある今井を射殺した。

 小崎との隠れ家を警察に見つかり、警官隊だけではなく、ヤクザの組員も包囲する。絶体絶命の状況で投降を促されながらも、石川は無謀にも銃を乱射。手伝う小崎はヘロインが切れておかしくなっており頼りにならない。この辺りの田中邦衛は助演男優賞ものである。

 弾が切れたら刃物を持って警官隊に突入するも、石川は取り押さえられる。収監後、病気療養にて一時釈放。保釈金を工面してくれた情婦の地恵子は、仮出所三日前に自殺していた。

 かつて斬りかかった親である河田組を訪ねた石川は、河田に向かって「そろそろ俺も組を構えたいので、金と土地を用意してくれ」と要求する。地恵子の骨を齧りながら。組長を射殺した今井組の元も訪れ「線香をあげさせてくれ」と頼むが、かつてその右腕を石川が銃で撃った今井の妻に断られる。

 墓参りの最中に石川は河田組組員に襲われ、無数の切り傷を受ける。しかしそれでも死なず、病気療養後府中刑務所にに収監。その三年後に刑務所屋上から飛び降り、自ら命を絶った。29歳の生涯であった。

 無茶苦茶である。本来なら、親に斬りかかった時点で殺されていておかしくない人物である。それが病気(結核)でもヘロインでも刀傷でも死なず、投身自殺という最期を遂げている。自分を殺せるのは自分しかいない、とでもいうように。

 分からない。どうして石川はこのように生きたのか。彼の人生に巻き込まれた地恵子は何を想い、死んでいったのか。石川はヘロインによっておかしくなったのか、元々おかしかったのか。分からないながらも行動は記録として残る。誉められた人物ではないのに伝説ともなる。外からは自由に見えて実際はがちがちな規律だらけのヤクザ社会において、そこから外れた姿が、その道の人たちには輝いて見えたのかもしれない。

 実録ヤクザ映画でありながら、1999年に編まれた「キネマ旬報 オールタイムベスト・ベスト100(日本映画編)」では38位に選出されている。

 英語教材風AIイラストネタまとめ5。これで計60枚。

 昨日の英語教材風AIイラストネタ。


「咳をしても一人」の別バージョン。


「虹の建設現場」の流れ。


校歌はもちろんAC/DCです。

 今日の一枚。「広大な墓地のイメージ」


 


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泥辺五郎
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