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「野宿者にヴィーガン弁当を配ろう!」企画レポ①準備編
アメリカには「ブラック・ヴィーガニズム」というムーブメントがあります。安い加工肉食品による健康被害が、低所得者層のアフリカン・アメリカンに偏って生じてしまうという社会問題が起きており、そういった健康不公正への対抗と同時に、「ヴィーガニズム=白人の中流階級・上流階級による排他的な思想」といった固定観念を打ち壊すような動きです。
*詳しくは以下の記事参照のこと
日本においても現在のヴィーガニズムは、経済的にある程度余裕のある人にしかなかなか実践できないものになってしまっています。外食のできる飲食店は限られていますし、お店は都心に集中しているため、田舎との格差も生じています。すべて自炊すれば可能かもしれませんが、病気や障害、生活に困難を抱えている人にはそれは簡単なことではありません。
日本でもアメリカの状況と同様、生活困窮者には不健康な食品が行き渡ってしまうという残念な状態になっていますが、本来は、病気だったり、生活に困窮している人にこそ、栄養価の高い植物性の食品や商品を手に取ってもらうべきです。動物のいのちや自然環境を破壊し、経済コストの高くつく肉や乳製品を使わなくても、野菜だけで十分おいしいものを食べられて心も健やかでいられるとしたら、それは工場畜産や健康不正義を打ち崩すことにも繋がるはずです。
わたしたちはそのための取り組みへの第一歩として、「野宿者へのヴィーガン弁当配布」の実践を目指し、日本最大の日雇い労働者の街、大阪釜ヶ崎に行ってきました。
・・・と掲げた理想はでかいものの、我々は料理のプロフェッショナルというわけではなく、炊き出し経験も豊富ではないので、自分たちで弁当企画する経験値はほぼゼロ。釜ヶ崎で長年野宿者支援をされている野宿者ネットワークの代表、生田武志さんと共に、お弁当作り素人たちが試行錯誤しながらヴィーガン弁当をつくった記録になります。失敗や反省も含めてお楽しみください。
(文責:深沢レナ。お弁当配布日 2024年4月20日)
レシピ作成
まず、レシピを考えるところから始まります。野宿の方約50人分必要ということで、最初は定番「おにぎり&ソイミートの唐揚げ&ヴィーガン豚汁」という案が出たのですが、揚げ物のための調理器具がないので難しい。また、今回は炊き出しではなく、夜回りで配るお弁当のため、汁物だとこぼれてしまうリスクがありました。
続いて、餃子という案も出たのですが、餃子を50人分作るのは手間がかかりすぎる。そうしたら冷凍食品のヴィーガン餃子を購入しようか、という意見も出ましたが、やっぱり今回は添加物の入っていない体にいい食べ物をみんなの力で作ってお渡ししたい、という気持ちがあり、結局、メインのおかずに麻婆豆腐、副菜はポテサラ、玉ねぎの梅酢漬けを作ることに決定しました。
食材準備&容器の準備。搬入
今回のレシピには、あまり特殊な食材は必要なかったのですが、ヴィーガンの豆板醤、梅酢は、一般的なスーパーではなかなか入手ができないので、事前に深沢が東京で購入しておきました。(あと、ニュートリショナルイーストも持っていくはずだったのですが忘れてしまいました。詳しくは後述。)
弁当配布の前日に釜ヶ崎に到着し、食材担当と容器担当に別れて行動。今回助っ人で東京から来てくれた、なかのまきこさんが容器の手配をしてくれました。
残りのメンバーは近所のスーパーに食材の買い出しへ。
これが食材リストだったのですが、とりあえず50人分ということで、単純計算してカゴにぶち込んでいきます(※のちのち単純計算してはいけなかったことを悟ります)。
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お店に置いてあった豆腐全部、30丁近く買い占めます。ご近所様ごめんなさい。
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ひととおり食材を揃えたら、生田さんのお家に行って麻婆豆腐と漬物の下準備。豆腐のパックに包丁で切り込みを入れて水を切り、冷蔵庫の中に積み上げて保存しておきます(生田家の冷蔵庫を占拠するはめになりました)。それが終わると、梅酢づけ用に買った新たまねぎを泣きながら薄切りに。切り終わったあとはジップロックに入れて梅酢をかけて下準備完了です(ちなみにジップロックはめちゃくちゃ重宝することになりました)。
当日 搬入
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炊き出しでよく見るでっかい業務用の炊飯器は用意できなかったため、生田さんがスーパーで事前に注文し調達してくれていました。ご飯を50人分受け取り、台車に乗せて、調理場へと向かいます。しかしその前に・・・
こどもの里
お弁当をたくさんつくるには、大きなザルや鍋が必要になるということをまったく考えてなかった!!! …ので、釜ヶ崎の児童館「こどもの里」さんに急遽お願いし、ずんどうと大きなザル、ボウルをお貸しいただきました。
ふるさとの家
今回キッチンを使わせていただいたのはこちら。普段は野宿の方向けに開放していて、インスタントラーメンを茹でたりできるするそうです。最低限の鍋やラーメン用の器がおいてありました。古いけど清潔に保たれています。
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この日は、わたしたちの作業のために丸一日貸切で使わせていただくことになってしまいましたが、様子を見に来たおばちゃんたちが「暑いやろ」と扇風機を回してくれました。
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たまねぎ&ネギ刻み地獄のはじまり
まずは水に昆布と椎茸をつけて放置し出汁をとり、ポテサラ用のじゃがいもと麻婆豆腐用のソイミートをゆでます。
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それと同時に野菜を洗い、ひたすら刻みます。
ポテサラ用のたまねぎ、きゅうり、にんじんは薄切り。麻婆豆腐用のねぎ、にんにく、しょうがはみじん切り。たまねぎ&ねぎがなかなか終わらず、みんな鼻をグスグス言わせながら黙々ときります。
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一番の地獄はアーモンドだった
しかし、一番の難関は、意外にもアーモンド・・・!
ヴィーガン麻婆豆腐は、ひき肉の代わりに大豆ミートだけでもつくれるのですが、刻みアーモンドやクルミを入れるとコクがでるんです。今回は参加メンバーにクルミアレルギーの方がいたのでアーモンドだけにしました。野宿者の中には歯が弱い方もいらっしゃるので、喉をつまらせてしまわないよう、細かく刻んでいきます。
夕方になると、心強い助っ人がさらに続々と来てくれました。
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わたしは去年から代々木公園での「ベジ炊き出し」にも参加させてもらっているのですが、他人と協力して食事をつくるというのは不思議な空間です。はじめて顔を合わせた人とも、隣に並び、手元の食材を見ながら、ときどき相手の顔も見ながら、話をし、お互いを知っていくのと並行して食事が完成していく。野宿の人のためのご飯をつくることが目的ですが、作っている過程でも、毎回何か得られるものがあるのを感じます。
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・・・と、のんびりやっていたら時間が足りなくなってきました…!!
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途中で生田さんがコーヒーミルでアーモンドを挽けないか、自宅にマシーンを取りに行って試してくれましたが、残念ながらうまくいかず。
日も暮れてしまい、時間が押しているので、刻みチームとパック詰めチームに別れて作業します。
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とりあえずポテサラはできた。…といっても、途中で玉ねぎの量に比べてジャガイモの量が少ないことに気づき、追加のジャガイモを入手しに、生田さんに買い出しに行かせてしまいました。最年長なのにパシリのように扱ってしまい大変申し訳ない。
ちなみに調味料も、ニュートリショナルイーストを持ってくるのを忘れてしまったのですが、京都在住のヴィーガン黒瀬陽さん(ASー動物と倫理と哲学のメディア代表)がイーストをもってきてくれたおかげでなんとかなりました。ヴィーガン仲間、大事。
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【ニュートリショナル・イースト】
ヴィーガン御用達食材の一つ。ヴィーガンに不足しがちなビタミンB12を含む。チーズっぽい風味を出すことができる。
→ヴィーガン食材についてはこちらの記事を参照のこと。
https://note.com/dontoverlook_ha/n/n0e178cc7e421
下準備をしておいた新玉ねぎの梅酢漬けは、余分な水を切り、白胡麻をかけて完成です。
ご飯をつめたパックに、ポテサラと梅酢漬けを盛ります。
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鍋にぶち込むだけでは終わらない
さて、残るはメインの麻婆豆腐。
想定外の作業量で予定より大幅に遅れてしまいましたが、やっとアーモンドを制覇し、麻婆豆腐も調理開始。ずんどうにごま油をたっぷり入れ(※一瓶で足りるかと思いきや全然足りず、生田家の油も使いきるはめに)、にんにく、ねぎ、しょうがを炒めます。そこにアーモンド、大豆ミートも加え、焦げ付かないように丁寧に混ぜます。
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そこに豆板醤も加えます。しかし具の量が多いのであんまり味がわからない! ちょびちょびと入れては味見をし続けましたが、結局一瓶まるまる使い切りました。
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そこに、半日つけておいた昆布&椎茸出汁を投入し、水切りしておいたお豆腐も入れます。
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けれども鍋が深くてなかなか温まらない・・・。家庭でつくるときには全然想定していない事態が起こります。
その上、夜周りは深夜までかかるため、みんなの夕飯も作らなくてはならず、麻婆豆腐を火にかけている間にまかないも大急ぎで作ります。メニューはエリンギと青梗菜のしょうゆ炒め、アボカドと豆腐のサラダ。本来は5分でできる超簡単ヴィーガンレシピなのですが、鍋を使ったので煮物のように水気たっぷりになってしまった…。しかも時間がないので、配膳する暇もなく、みんな鍋から直食い&立ち食いです。
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パック詰め
麻婆豆腐のできあがりを待っている間に、ご飯&ポテサラ&漬物のパッキングは完了!
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麻婆豆腐はやく煮えろよー、とじれて火を強めたら、焦げはじめてしまうというハプニング。でもとりあえず完成!!
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麻婆もパックにつめてきますが、大きい鍋だったためにアーモンドが下に溜まっていて、配分に偏りが生じてしまいました。これも想定外。
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でもとにかく、ひととおりパック詰めが済み、50人分+α完成です!
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掃除
夜周り開始時刻が迫りくるものの、後片付けまでは間に合わなさそう・・・。なので、みんなが先に夜廻りに行っているあいだに、3人残って片付けをします。もともとの状態以上にきれいになるように丁寧にお掃除。お借りしたずんどうのコゲもしっかり落とします(※アルミホイルと重曹パウダーがあってめちゃくちゃ助かった)。また、今日は台所を1日専有してしまったし、ガスもかなり使ったので寄付をお支払いします。
わたしを含めた後片付けメンバーは、一番遅い夜廻りのコースに参加させてもらえることになったため、ご飯を食べながらのんびり待ちました。
はじめてのお弁当企画感想
「健康不正義を打倒する!」というデカい目標を立てたわたしたちですが、所詮は弁当初心者だということを初めから終わりまで痛感させられまくったお弁当制作会でした。
でも、困ったことが起こっても、その都度、仲間に助けてもらったり、みんなの知恵を出し合ったり、急げ急げ〜といってみんなではげましあう。鍋がなければ借りたらいいし、お借りしたらちゃんと綺麗にして返す。
こういった助け合いのネットワークというのは、野宿の人に対してだけに限らず、わたしたち自身にも必要なものであって、野宿の人へお弁当を配ったり支援したりするのは、そのあたりまえのネットワークの延長でしかないよな、と、あらためて助け合いの大切さを学ぶことができました。
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→弁当配布編へつづく。
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