『となりのヨンヒさん』(チョン・ソヨン)読了
これはSF小説だから設定は現実と違うはずなのに、どうも"この宇宙"を見たことがあるような気がしてしまう。
それは錯覚として扱ってもいいけれど、この話を人が書いているという点を重視するなら、人の中にこそ宇宙は広がるのかもしれないとも思う。
例えばあまりにも辛いことがあったとき、現実という重さでのしかかるものを自分から丁寧に剥がし、しばしじっと眺めるような時間。時折私たちは場所や時間、概念をも超越した途方もない空間に身を置いて、その現実を見つめる準備をしなければならないのかもしれない。全く知らない、知る由もない、存在を知らない、あるはずもない星に生きる人をおもうとき、同時に私は確かにある地球という星に住む"私"を考えているのかもしれない。
そして私という存在も"誰か"にとっては自分を改めて見つめるための名前も存在も知らない星に生きるもの、になるのかもしれない。
多くの人が画像越しにしか宇宙を見たことがない中で、おそらく無である宇宙は有を含み、また同時に無を改めて大きく含むのかもしれない。
特に好きだった話
「デザート」「宇宙流」「となりのヨンヒさん」「跳躍」「引っ越し」「秋風」