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【読書記録#33】【本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む(かまど・みくのしん)】

非常にセンセーショナルなタイトルをつけれられているこの本。X(旧Twitter)でこの本に関する投稿を見かけて、一目散に飛びついて読んでみると、今までの自分の読書経験を恥じてしまうような読書が展開されていた。

まだ本書を半分程度しか読めていないのだが、「これは鮮度が落ちる前に書きたい!」と思い読書記録を書くことにする。

そもそも著者はいったい何者なのかというと、オモコロというWEBメディアのディレクター・ライターのお二人なのだそう。オモコロの名は私自身も知っていて、ちらほら記事を読んだこともあるのだが、2005年から続いている老舗だとは知らなかった。

本書は本を読んだことがないライター・みくのしんさんに同じくかまどさんが本を読ませて、そのレポートを書きたいという発案から出てきた企画。ライターなのに本を読んだことがないなんてどういうことやねん。

そもそもこのみくのしんさんが非常にユニークな方と来ている。本書の「はじめに」に書かれたみくのしんさんの人柄が分かるエピソードがこちら。

・食べることが大好き。あまりにも美味しそうに食べるので、外食していると、周囲の客が、彼につられて同じメニューを頼み始める。
・人に好かれる性格。営業や勧誘の迷惑電話がかかってきても、相手がみくのしんとの会話で楽しくなっていまい、なかなか電話を切ろうとしてくれない。
・並外れた節約家。壊れたフライパンを捨てるとき、もったいさなさすぎてごみ集積場でひとり泣いていた。
・次は、明るく別れようと思い、マジックペンで粗大ごみに笑顔を描いたが、その顔を見ていると、かえって悲しくなってきて、ごみ集積場でまた泣いた。

めちゃくちゃ優しいんだろうなぁ~というのが第一印象。ごみを捨てるときにそこまで感情移入したことがなかったので、この時点で「こんなに感情豊かな人がいるのか…」と度肝を抜かれる。そのフライパンで何を作ったのか、どんなエピソードがあったのかを思い出しちゃうんだろうな。

さて、そんなみくのしんさんが繰り広げる読書体験とはいかなるものか。彼は文字を追うだけだと処理が難しくなるのではないかと懸念し、音読をすることに。この時点で身体をフルに使って読書しようという、彼なりの向き合い方が見て取れる。

最初に読んだ本は太宰治『走れメロス』。私も小学生の時に読んだことがあるのだが、詳細はあまり覚えていない。みくのしんさんはこれを音読し、物語に対して鋭いツッコミや自分の経験を回顧しながら物語に没入していく。

簡単だが、『走れメロス』の内容に触れることにする。

民の忠誠を疑う邪知暴虐の王・ディオニスに対して、メロスは人の心を疑うことが最も恥ずべき悪徳だとするも、歯向かってきたメロスを王は磔の刑に処すことを決める。王はここまで追い込めば口だけの者は実刑の時に泣いて詫びるだろうと考えたからだ。

メロスは命乞いもせず、死ぬ覚悟であることを伝えるが、唯一の気がかりである妹の結婚式を挙げさせて欲しいと懇願する。3日の猶予と、親友のセリヌンティウスを身代わりに立てることを提案し、王は「必ず戻る」と言うメロスを疑いながらも解放する。

こうしてメロスは村に戻り、妹の結婚式を見届け、刑に処されるために王の元へ走りだす。

激流の川の横断や山賊の襲撃など艱難辛苦を乗り越えたメロスは、やっとの想いで期限内にセリヌンティウスの元へたどり着くことができ、2人の深い友情を見届けた王も心を入れ替える、という話。

ここで本書の内容に戻るのだが、セリヌンティウスが自分の知らないところで勝手に身代わりに立てられたと感じているみくのしんさんの反応がこちら。(引用文は『走れメロス』、地の文はみくのしんさん)


「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許してください。
妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます

みく だからってこういう場で名前出すなよ。セリヌンティウスも「え!?」ってなるだろ。

私の無二の友人だ。

みく まあ、こういう状況で真っ先に名前が出るくらいの親友ってことなんだろうね。

あれを、

みく 「あれ」を?あんまり友だちをあれ呼ばわりしないほうがいいぞ、メロス。

人質としてここに置いて行こう。

みく ん???なんかすごいこと言い出したんだけど。

私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、

みく ・・・・・・マジで言ってんの?

あの友人を絞め殺して下さい。

みく メロスも乱心してる???


とまあ、このような調子で本書が進んでいく。本書を読んでいて私が思わずクスッとなってしまった部分なのだが、文章のいろいろな捉え方をみくのしんさんは披露してくれている。

テンポが素晴らしく、読みやすい本になっているので、自分の読書経験をひっくり返したい方は一読の価値があると思う。

それではまた、次の本で。


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