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【第15回】ゆるゆるM&Aセミナー:ざっくり財務・事業計画分析②P/Lと事業計画
日本一ゆるゆるなM&Aセミナーです。気楽に読んでください。
今日は、M&Aの中でもっとも大事な部分、P/Lと事業計画について説明します。
特に事業計画はとっても大事!(何度も言いますw)
ですので、特に、IMを受領した買い手は、何に気を付けてP/Lと事業計画を分析するべきか、事業会社の目線をお伝えしたいと思います。
■プロフォーマP/Lと事業計画
IMには、過去数年分のP/Lの実績が記載されています。
対象会社をまるごと買収する場合は、会社のP/Lでよいのですが、対象事業をカーブアウトする場合などは、該当する事業のみのP/Lが開示されます。これをプロフォーマP/Lといいます。
過去のP/Lから、現在の対象事業の収益力(損益・EBITDAなど)が分析できます。
そして、同様に、事業計画として、将来数年間の計画P/Lが示されます。当然、この事業計画を見ながら将来の収益力を分析します。
事業計画によって生み出される利益≒現金の累積が「対象事業の価値」と判断されます。
注意すべき点としては、事業計画はあくまで計画です。売り手は、なるべく高く評価されるよう背伸びをした計画を示してきます。
買い手は、事業計画をしっかりと分析し、妥当性を見極め、場合によっては妥当な水準に修正しながら、対象事業の将来収益性を確認する必要があります。
それでは、それぞれのチェックポイントを、要点に絞って説明します。
■売上高推移
ほとんどの場合、将来売上高が増加する事業計画となっているはずです。
特に注意すべき数値指標は、売上伸長率(前年に比べて何%増えたか)です。
なぜ売り上げをあげられるのか?(妥当性)
事業目線で、市場状況や競合動向も踏まえ、しっかりと精査する必要があります。必要に応じて売り手にも質問しましょう。売上の見立てが会社の価値をもっとも大きく左右します。
過去伸長率に比べ、事業計画は違和感なくつながっているか(連続性)
についてもチェックしていきましょう。具体例は以下の通りです。
✔異常な急増
➡ 事業計画における伸長率が、あきらかに過去伸長率より
大きい場合は要注意です
✔V字回復
➡ 特に、過去マイナス成長だった企業が、来年からV字回復し
売上急上昇するという事業計画をよく見ます。
なぜ回復できるのか要確認です。
✔後半傾斜、最終年度積み増し
➡ 事業計画の最終年度はもっとも予測しがたいので、
逆に言えば数値を積みやすいのですが、安易な鵜呑みは危険です。
後日説明するDCFバリュエーションでは、最終年度の利益が
会社の価値の大半を決定してしまうので、後半ほど要注意です
■原価率・販管費率
これらは売上ほど大きな変化は見られないと思いますが、それでも徐々に原価率・販管費率を下げてくることが多いです。
事業目線にてコストダウンの比率は妥当か、異常なコスト低下がないか、しっかりとみる必要があります。
できれば、原価・販管費の内訳もしっかり分析しましょう。
売上が何倍にも増える計画なのに、必要な費用(経費や研究開発・人件費など)が計上されていなければ、売り上げ計画は当然に達成できるわけがありません。
■その他のポイント
営業外損益についても、継続的に発生する収入や支出がもれていないか確認必要です。
また、実効税率に違和感があれば質問しておきましょう。ストラクチャーによっては繰越欠損有無なども確認ポイントとなります。
■最後に償却費がきちんと把握できるか確認しましょう
前回説明したキャッシュフロー計算を行うにあたり、そしてバリュエーションにてEBITDAを用いる場合など、償却費(ノンキャッシュコスト)が計算に必ず必要となります。
もし償却費がわからないP/Lや事業計画を受け取った場合は、必ず追加で要求しましょう。
■まとめ
今日は、もっとも大事なP/Lと事業計画についての説明でした。
確認すべきポイントは、
✔事業計画によって生み出される利益≒現金の累積が「対象事業の価値」
➡ とにもかくにも「事業計画」がすべてのスタート
✔過去分のP/Lから現状の収益力、将来の事業計画から今後の収益力を分析
✔ポイントは、連続性と妥当性!特に売上高の妥当性は最重要ポイント
売り手になった場合は、買い手が上記のような点をチェックしに来ることを予測し、質問や指摘されたときにきちんと説明できるよう、理論武装をしておきましょう。
それでは、次回もお楽しみに☆