ドリップコーヒーの抽出時間と味の変化
毎度ありがとうございます。滋賀県湖南市のDONGREE COFFEEROASTERS 店主&焙煎士のドリーです。
今回は、湯温や粉の粒度に続き、『計って淹れるドリップコーヒー』の最後の要素としての『抽出時間』についてお話したいと思います。
ドリップコーヒーの未抽出・過抽出のおさらい
過去2記事の『湯温』や『粒度』のときにもお伝えしてましたが、コーヒーの抽出、とりわけハンドドリップコーヒーには
未抽出 = 味が足りなくて美味しくない
過抽出 = 味が出過ぎて美味しくない
という要素が存在します。
ただでさえ複雑な数百の味の成分が、湯温や粒度でさらに変化する。
コーヒーが難しいとされる由縁の大部分が、この未抽出or過抽出にあると僕は思っています。
どのあたりが一番美味しいのさ!はっきりしてよ!
と何度も叫びたくなる、めちゃくちゃ世話がかかり、いくら淹れても飲んでもずっと面白い、それがコーヒー!
そんな気難しいコーヒーに取り組み、湯温も粒度も完璧に自分の好み、理想のレシピが決めれたとします。
しかしその湯温と粒度を活かすも殺すも時間次第というのが今回の本題です。
ドリップコーヒーは、時間経過とともに味の種類が変化していく
ドリップコーヒーの誤解の一つとして、『粉に注いだお湯の上澄みは雑味』だとか、『最後までお湯を落とし切るのは良く無い』というノウハウが一定数広まっています。僕自身も当初はそれを信じて、お湯は落とし切る前にドリップの途中で切り上げる手法を長らく使っていました。
この理屈は、半分正解で半分間違いなんです。
実はコーヒーの味成分は、お湯を注いだ時からその全てが抽出されるわけではありません。
抽出開始から出てくる味には、順番が存在します。
上記図に示したように、抽出開始の初期段階ではまず『酸味成分』が落ちて、次いで『甘味成分』、そして抽出後半に『苦味成分』が出てきます。
こうしてみると、人が一番美味しさを感じる『甘味成分』が、刺激的な酸味と苦味に挟まれて出てくることが理解できます。
よく浅煎りコーヒーの酸っぱさが目立つのは、この初期段階の味しか落ちていない『未抽出状態』が原因であることが多々あります。
浅煎りの豆=酸っぱい、ではなく、浅煎りかつ未抽出状態だと酸味しか落ちてなくて酸っぱい、のです。
もちろん焙煎が足りてなくて酸っぱさしかないコーヒー豆というのもあるので、それが好みで無い場合は豆を変えましょう。
『上澄み』や『泡』に雑味があるわけではない
ここで先程の『お湯を落としきったら雑味が出る』の誤解が半分正解で半分間違いという根拠が見えてきます。
時間経過とともに、甘味成分が落ちきったタイミングでドリップも終えてしまえば(途中で切り上げる)、ネガティブな苦味を落とすことなく美味しい部分だけ味わえるわけです。
コーヒーの科学的な理論が今ほど明らかにされていなかった時代、先人達のそういった経験則から生まれたノウハウではないかと思います。
つまりコーヒーの粉の上澄みや泡に雑味・苦味が含まれているわけではなく、『後半に出てくる苦味が邪魔』なので切り上げていたのです。
なので、適切な抽出時間さえ測っていれば、お湯を注ぎきって丁度いい味が作れるし、そのほうが毎回自分の感覚で切り上げるよりも、安定したドリップが可能になります。
これが最近主流の落とし切りのドリップの考え方です。
さて今回は、普段ドリップコーヒーを家で淹れてる方でもあまり意識をしていないことが多い『抽出時間』についてお話ししました。
ここで一気に難しく感じられる方も多いですが、まずは時間を計って味の変化を体感してみてください。大体1分以上違えば、かなり印象の違うコーヒーが出来上がります。
時間を計るだけならストップウォッチやスマホのタイマー機能で十分ですが、おすすめは『ドリップスケール 』というコーヒー器具です。
その名の通り、ドリップコーヒーのためのスケールで、『抽出量』と『時間』を同時に計れる優れものです。各メーカーから販売されていますが、世界的に一番有名なHARIO社製が個人的には扱いやすく、デザインも気に入っています。
是非この機会に『計るドリップコーヒー』を始めてみてください。
DONGREEのドリップワークショップでは、湯温・粒度に続き、今回ご紹介した抽出時間がどのように味に影響するのか、実際に飲み比べて体感できる内容で行っています。
家でドリップをしているだけだとイマイチその関係が分からない、実際に話を聞きながら試してみたい、という方は是非お越しください。
みなさんのコーヒーライフが、楽しい発見と美味しいひとときになりますように!