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今日も夜は、私たちを置いていく【前】
まんまるな月が夜の街を静かに見守り、まだ灯りが煌々と照らしている駅前は人々の喧騒に包まれる。
「次の電車乗れるかなぁ」
私は、そう速くもない足を回して、駅までの道のりを走る。
「はぁ……はぁ……。もうちょっと……」
駅まではもう少し、しかし、私の足は路地の入口で止まる。
こっちの方が近道かな……
「えぇい!行っちゃえ!」
学校で口酸っぱく言われていた。
路地の方は危険だって。
ち
今日も夜は、私たちを置いていく【後】
夜はひたすらな退屈を凌ぐのが苦しかった。
なぜだか目が冴えてしまって眠れない。
吸血鬼故なのか、僕の元からの性質なのか。
それでも、日を跨ぐ前までは食事の時間と割り切ってしまえばそう苦しいものでもない。
だけど、徐々に町から人がいなくなって、鳥も、犬も、猫もみんな眠りについてしまって。
月と星は、僕に構ってなんかくれない。
父さんと母さんは、僕がまだ”人だったころ”に事故で死んだ。