スイーツメモリー(羊羹)
羊羹は買うものだと思っていたけれど、溶いて混ぜて固めるだけという簡単な工程だった。上質の餡、砂糖加減、寒天の量等で、味は左右されるのだが、分量を間違えなければ、誰でも作れる。
元は中国の料理で、羊の羹(あつもの)、つまり羊の肉を煮たスープが冷めてゼラチンが固まったものだった。なるほど、それで羊羹って書くのね。鎌倉・室町の頃、禅僧によって伝えられ、精進料理として、羊肉の代用として小豆を用いたそうな。というか、その頃の日本に、羊はいなかったよね。
栗蒸し羊羹 (日本で最初に作られたものは、蒸し羊羹)
羊羹は季節によって、姿を変えて、作れるし、小さな和菓子の中に、四季の移り変わりや自然の営みを表現できる。
春 桜餡と道明寺羊羹 (桜の香り 春の喜び)
夏 マスカットとブルーベリー羊羹 (お店では売ってないと思うけれど)
夏 水羊羹、と思ったら水まんじゅう!(大垣金蝶園へ買いに行きたいなぁ)
夏 岩清水 清流と川底(四万十川のイメージ)
秋 南瓜と甘酒の羊羹 (格子は、人類が好きな模様)
秋 柿羊羹 (柿食えば、鐘がなるなり…)
冬 抹茶と黒胡麻羊羹 (鬼滅の刃 炭治郎着物柄風)
写真奥の「稀」の文字が見える青い菓子器は、側面に「古稀 還暦」 の文字が描かれている。亡き祖父母が古稀・還暦の時に作らせたものだ。器の内側の底には祖父母の名前が、篆書体(てんしょたい…印相文字)で描かれている。
祖父は、その時代はよくあること(?)か、お妾さんがいたらしい。いつの時代の話なのか不明だが、ある時、業を煮やした祖母が、お妾さんの家へ押しかけ、大八車にお妾さんにあげていた着物やら何やらを載せて帰ってきた、という武勇伝(と言っていいのか?)がある。
まず、大八車に驚きだ。(この名称が出てこなくて、ググってしまった)NHKの朝ドラでしか、お目にかかったことがない運搬車だ。夜逃げする一家が、タンスやら布団やら、やかんを摘んで、人目を避けて家を出ていく時、押しているあれですよね。その頃の、祖母は何歳だったのだろう? その後、三人は、どうなったのかなぁ。昔の話なので尾ひれがついていただろうけれど。今では、もうみんな亡くなってしまって、手元にあるのは青い器だけである。
〇材料 … 白あん 砂糖 抹茶 寒天 (きなこ)