24年最後に読んだ本・25年最初に読んだ本
2024年最後に読み終えた本は、エルヴェ・ル・テリエさん『異常(アノマリー)』(加藤かおりさん訳、ハヤカワ文庫、2024年12月4日初版発行)。
文庫でおよそ500ページ。単行本発売当時の2022年にも大変話題になったけれど、読み通すのに骨が折れそうで尻込みしていた。しかも「あらすじ検索すべからず」の触れ込み。本当に面白いのか確証が持てないまま大作に臨むには、年末年始の長期休みは打ってつけでした。
結論から言えば、たしかに面白い。検索もしなくて正解だった。あらためて、ネタバレがSNS上の至る所で落ちている現在、その「鮮度」を奪われないように読み始めるのは至難の業だよなと思う。誰かに「面白い」と言われたのを信じて読み切るしかない小説。ちなみに自分は、ゲームクリエイターの小島秀夫さんの絶賛を信じた。
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2025年最初に読み終えた本は、中島京子さん『妻が椎茸だったころ』(講談社文庫)。
現実と虚構、リアルと幻想の境界が曖昧に溶けていくような短編集。夢かうつつかという感覚は正月にぴったりでした。
たとえば表題作は、突然死した妻の日記に「自分が椎茸だった頃」という一言があるのに目を留めた夫の話。妻が生前予約して、キャンセルが認められなかった料理教室に行って、その話をする。すると先生は「私がじゅんさいだったころ」の話を始める。誰にでも、そういう時はあると。
人間が過去にはおのおの野菜ではなかったと、なぜ断言できるか。人間である自分が、実は椎茸の見た夢だったなんてことは、本当にないだろうか。
そんな空想は、正月であれば、おおいにゆるされると感じました。
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