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「わたしはあんたたちを絶対許さない」 【贖罪】
幼い頃に見たある事件!
その悲しい結末とは、最後に知ることになる事実が・・・
【本の基本情報】
〇ジャンル:小説・日本文学
〇本の種類:文庫本
〇著者名:湊 かなえ
〇出版社:双葉文庫
■「贖罪」を読んで
表紙を見て綺麗だなぁと思っていました。
表紙の綺麗さからは想像できないような「贖罪」というタイトル。
湊かなえさんの作品ということで、きっとも面白いだろうなぁと思いながら読みました。
物語は、幼い頃に同級生の友人の死を経験した少女たちの話から始まります。
同級生の少女がある男に殺されます。
殺された少女と直前まで一緒に遊んでいた少女たち、当時の事件の様子を色々聞かれますが、それに対して幼い少女たちは正確に答えることが出来ません。
そして事件は迷宮入りとなってしまいます。
やがて少女たちは大人になり、それぞれの人生を歩み出します。
しかし、その人生には、幼い頃に経験した「友人の死」、「幼い少女の死」が常に付きまとい、彼女たちの人生を狂わせていきます。
そしてその少女の死には、彼女たちが知らない真実が隠れていたのです。
■娘を亡くした母親の言葉の重さ
直前まで一緒に遊んでいた少女たちが、犯人の特徴などをしっかりと答えられない、そのせいで犯人が捕まらない。
そんな状況にどうしていいか分からず、感情を爆発させた娘を亡くした母親は、その少女たちに
「わたしは、あなたたちを絶対許さない」という言葉を投げつけます。
その言葉を投げつけられた少女たちは、大人になっていく過程で、その言葉の影響を大きく受けてしまいます。
私たちが悪いのか、少女の死をうまく受け止められていない、そしてその母親の感情も、何も考えずそのまま受け止めてしまった。
友達であった少女の死という事件とその母親から受けた言葉は、大人になった彼女たちの人生を負の連鎖へと向かわせます。
娘を死をどうしても納得できずに、その気持ちを爆発させて、何の罪もない少女たちに投げつけたその母親の言葉が、少女たちの心の中にトラウマとなって大きく突き刺さっているのです。
「わたしは、あなたたちを絶対許さない」
この言葉を投げつけた母親の感情、そして、その言葉を投げつけられた少女たちの感情。
その当時の状況や、そこにいる母親と少女たちの様子が実にリアルに想像できる、その表現にドキドキします。
そして、母親の言葉や事件当時の記憶が少女たちの人生や考え方にどう影響していったかをうまく表現されています。
幼い少女たちにとっては、この言葉がどれほどの恐怖と重たさだったかと思わされました。
■「贖罪」を読んで!まとめ
本作品は、幼い少女が男に殺害されて、その殺害の直前に一緒にいた4人の少女たち、そして、殺害された少女の母親。
少女たちが大人になり、それぞれの言葉でこの事件と人生を語るという構成で物語は進みます。
少女たちは大人になっても、当時の事件の記憶が残り、そして、母親から受けた言葉を覚えていました。
母親が放った「あなたたちを絶対ゆるさない」という言葉。
それによって、彼女たちの人生が負の方向へと向かっていくという様子を描いています。
しかし、その事件はある真実へと繋がっていきます。
同級生を失った少女たち、トラウマとなった言葉。
それらを抱えた少女たちの負の連鎖へと向かう彼女たちの人生、それらを湊かなえさんらしい表現で描いています。
しかし、これだけで終わらないのが本作の深さです。
その事件には実は母親に関する過去が関係していたのです。
そこに隠れていた、事件の真実、そしてその真実の悲しさとは。
「贖罪」というタイトルの言葉。
自分が犯した罪を償っているのは、償わなければいけないのは、少女たちか、母親か、それとも・・・