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苦痛パレード

 寒い。部屋の温度は18℃。本当なの? 先週まで連日30℃超えだったじゃん。いきなり10℃以上も下がるのとか勘弁してほしい。
 昨日は冬用の靴下を履いて、ネックウォーマーをして、夜はホッカイロを貼って寝た。それでも寒かった。急激な温度変化に適応しづらい年齢である。

 今朝は首が痛い。毎日、毎日、どこかしらが痛い。もはや「どこも痛くない」という状態が思い出せない。45を過ぎたら毎日が不調のオンパレードだ。苦痛が騒がしいーー。


 若い頃、静寂を求めてタイの山奥に仏教僧を訪ねたことがある。当時の私は、自分を苦しめる外的要因から逃れようと必死であった。きっと地球のどこかには嘘や苦痛のない世界があって、そこに住む完全に正しい人々が、私を仲間として迎え入れ、保護してくれる(べき)と考えていた。アホか。

 そんな(アホな)私にタイ人僧侶が差し出したのが、タイ王国自慢の軟膏薬、タイガーバームであった。
「痛みにはこれがいちばん効くよ」と。
 ーー結局、外的要因に対してやれることはそれ以外にはないのである。


 騒がしいのは私自身であったと気付く。すべては幻想であり、この世は虚構であった。私が妄想で作り上げた、このとおりの苦痛に満ちた世界である。騒がしいパレードは私の内側で開催されている。首の痛みも、暑さも寒さも、隣のアパートの騒音も、すべては私の心が作り出す。私がここにいる限り、この世は騒がしいのだ。静寂は、ひとりひとりが自分の内側に作り出さなくてはいけない。それが出来る人は無敵になる。敵がいなくなるのである。勝利するのではなく、戦う必要がなくなるのだ。彼らの前では勝利者など幼稚すぎるんだろうな。

 あー、寒い。あー、首痛い。(アホ)


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