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ここまでわかった犬たちの内なる世界 #22 忠誠心と英雄的行動(続編)〜「ラッシー、助けを呼んで」仮説のゆくえ

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前回は、イヌがどのように忠誠心を発揮するのか、 思わず拍手喝采したくなる話、ホロリとする話、さらには爆笑ものまで幅広く紹介しました。

それでは、 イヌの忠誠心について科学はどのようなアプローチをしているのでしょうか? 具体的に見ていきましょう。


偽装緊急事態


人助けをするイヌの話に感動した心理学者のウィリアム・ロバーツ(William Roberts)は、<「ラッシー、助けを呼んで」仮説>を立てました。

飼い主のピンチを察知して第三者に助けを求める、いわばラッシーのようにふるまうイヌの謎を実験によって解明しようと考えたのです。

そこで、従来から社会心理学者たちがヒトを対象にして行なっている「ニセの緊急事態をつくり出し、その場に居合わせた傍観者がいかに人助けをするか調査する」というテストの、イヌバージョンを試みました。

2つのステップで行なわれた実験は、次のようなもの。

最初のテストでは、 複数の参加者を募り、飼い主にイヌを散歩に連れ出してもらいました。

散歩中の飼い主が、急に心臓発作のふりをして地面に倒れ込み、動かなくなってしまいます。近くには、傍観者役の人がいて、椅子にすわって静かに新聞を読んでいます。

予想外の結果

イヌは「傍観者」に助けを求めようと思えばそれかできるのですが、窮地の飼い主を救おうとしたイヌは1匹もいませんでした。 そればかりか、飼い主のまわりをゆっくり2周して、誰もリードを握っていないことを確認すると、走り去ってしまうイヌさえいました。「ラッシー、助けを呼んで」仮説は見事に打ち砕かれたのです。

このまま終わるわけにはいきません。心理学者たちは新たなテストを試みました。
ニセモノの本棚(ベニヤ板)が倒れて、飼い主が床に押しつけられ、起き上がれなくなって叫び声をあげるように演じたのです。やはり近くには傍観者を配置しました。

今度はその傍観者とイヌを事前に会わせておきました。 イヌが助けを求めないのは「 知らない人」 だからかもしれないという可能性を封じるためです。

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