【魚拓】 鈴木エイト氏 安倍政権と蜜月の関係を築く一方で、統一教会・韓鶴子総裁が日本の幹部に下していた仰天指令(2019年6月9日 ハーバー・ビジネス・オンライン)
鈴木エイト 2019年6月9日(ハーバー・ビジネス・オンライン ‐ 休刊中)
<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第13回>
安倍政権と蜜月の関係を築く一方で、統一教会・韓鶴子総裁が日本の幹部に下していた仰天指令
昨年9月、韓国で行われた日本人幹部“公職者”を対象にした修練会において、統一教会(世界平和統一家庭連合)の最高権力者である韓鶴子総裁が日本や安倍晋三首相を見下す発言をしていたことが入手した教団内部資料から明らかとなった。
そこには、統一教会を日本の国教にするという“国家復帰プロジェクト”を目論む韓鶴子の仰天指令が書かれていた。衝撃の内部文書を公開・検証する。
本連載ではこれまで自民党安倍政権と統一教会が共存・協力及関係にあることを指摘してきた。
しかし、筆者が入手した教団内部資料には、その緊密な関係を揺るがしかねない韓鶴子総裁のトンデモ発言が記されていた。その内容は、広島へ原爆が投下されたことを引き合いにして日本に悔い改めるよう諭すとともに、日本の教団幹部に対し国家復帰のために日本の「最高指導者」「最高責任者」つまり安倍晋三首相をひっくり返して打ち負かし、屈服させ、教育をしなければならないと指示するものだ。
教団メディアでは問題箇所をカットして配信
問題発言が飛び出したのは2018年9月23日。教団聖地・韓国清平の天正宮博物館で徳野英治・日本教団会長や梶栗正義・国際勝共連合会長/UPF会長らを筆頭に日本の幹部公職者が全員参加し開かれた『天地人真の父母様主管神日本家庭連合公職者孝情清平特別修練会/特別集会』の場だった。
この時の韓鶴子の“み言(みことば)”の一部は教団系のPeaceTVが配信しているHJグローバルニュースや世界平和統一家庭連合公式チャンネルのU-ONEニュースで9 月28 日に公開された。しかし、両ニュースで流れた韓鶴子の“み言”からは、対外的には公表できない国家復帰に関する重要箇所、日本や安倍首相を見下す発言がカットされていた。
両ニュースで流れた韓鶴子の発言は以下のものだ。
PeaceTV・HJグローバルニュース(2018年9月28日)
「3日間、悔い改めをたくさんしましたか 皆さんは、国家の復帰をどのようにすれば責任を完成することができるかについて、多く努力し考えたことでしょう 皆さん、これからは堂々と、日本が進むべき道について見せてあげ、教えてあげ、教育しなければなりません 本当に日本を愛し歴史の残る人物になりたければ、まず家庭から夫婦が一つとならなければなりません そして、日本の国民の前に、見本を見せてあげなければなりません それゆえ、家庭連合の祝福を受けなければならないと教育しなければなりません 時を逃してはいけません どれだけ切迫し、一方では、希望に満ちた勝利を満喫することのできるこのような祝福を下さったこの時において、皆さんが奇跡をつくりださなければなりません 奇跡を!分かりましたか? 創造主、天の父母様ありがとうございます このように、世の中で生きていこうとすればとても辛いことでしょう 多くの問題が起こり それらを解決しなければならず、苦しいです しかし、家庭があり その家庭と結ばれた情 そのような愛を歌うことのできる環境が この秋夕節にお月見をする気分です 分かりましたか? それでは、皆さんと私がこのような月を、秋夕をあと何回、迎えることができるでしょうか?たくさん、たくさん、迎えられたら良いでしょう そのためには皆さんが責任をしっかりと果たしてくれなければなりません 責任!分かりましたか?そうするでしょう?」
世界平和統一家庭連合公式チャンネル・U-ONEニュース(2018年9月28日)
「3日間(の修練を通して)たくさん悔い改めましたか 皆さんは国家の復帰に対してどのようにして責任を完成できるか、たくさん努力し考えたと思います 聖和6周年を迎えましたが6年前 そのようにお父様が逝かれると思いましたか 思いませんでしたか(思いませんでした)ときを逃してはいけないのです どれほど切迫しているか…… 反面 希望に満ちた勝利を満喫できるこのような祝福を下さったこの時に 皆さんが奇跡を起こさなければなりません 奇跡を、分かりましたか 皆さんが責任を果たしてくれなければなりません 分かりましたか やってくれますか 」
この内容だと、対象が曖昧で何が問題発言だったのか判然としない。ではこれらの放送でカットされたのはどのような“み言”だったのか。
何がカットされていたのか
筆者が入手した教団内部資料には、この時の韓鶴子の“み言”の最重要箇所がまとめられていた。以下をよく読んでほしい。HJグローバルニュースやU-ONEニュースではカットされていた文言が多々あることが判るだろう。
ちなみに「この国」とは韓国のことであり、“み言”に挟まれた「(原爆が落ちました)」「(そうです)」「(はい)」「(思いませんでした)」はそれぞれ、修練会に参加していた日本の幹部たちが一斉に応答している台詞だ。
「3日間、悔い改めをたくさんしましたか。皆さんは、国家の復帰に対してどのようにすれば責任を果たせるかについて、たくさん努力して考えたことでしょう。来年は(3・1独立運動以来)建国100周年となる年です。この100年の期間に多くの出来事、悲劇的な事情がたくさんありました。その中心の張本人だった国は、第2次世界大戦直後の4大国であったけれども、もちろん日本もありました」
「1945年にこの国は日本から解放されました。その日本はアジアと世界を自分たちが取ると考えて、1941年には米国を相手にして真珠湾を攻撃して失敗したでしょう。大した民族です。おそれ多くも、アジアで大国だと言うロシア、中国も恐れる米国を相手にしたのです。それで結果は1945年に広島に何が落ちましたか。(原爆が落ちました)。その歴史的事実に対して、日本の悲惨な環境だけを考えるのではなく、その背後を考えなければなりません。悔い改めなければなりません。どのように間違ったのか、悔い改めなければなりません。」
「民主主義と共産主義の対立、これは人間が責任を果たせなかったのです。このような状況から更に、特にアジアについて見るとき、日本はたくさんの過ちを犯しました。このような歴史に対して、この民族は多くの義人が命をかけました。この独り娘が成長して、責任を果たすことができるそのような年齢が16、7歳です。そのことについてみてみる時、この国には、独立のために叫んだ柳寛順という烈士がいます。16歳で抱いた、その志は変わりませんでした。それで、日本がその柳寛順をどのようにしたのですか。人間としては、さらには世界の民主主義が全世界的に広がっているそのときに、人間としては、更に女性に対して、そのように残酷にすることはできません。そうでしょうか、そうではありませんか?(そうです)誤まったことがあまりに多くあります。」
その国の最高指導者を屈服させる
「皆さんは、必ず国家の復帰の責任を果たすと決意しました。国家の復帰の責任を果たすにおいて、まずはその国の最高指導者を(私たちの教えで)打ち負かさなければなりません。屈服させなければなりません。何を言っているか分かりますか。そのために、私が多くのことをしてあげたではないですか。日本が世界に目を向け、アジアを考えることができるように、その様に教育しているではないですか。皆さんが今や、堂々と日本が進むべき道に対して、見せてあげ、教えてあげ、教育しなければなりません。そのため、家庭連合の祝福を受けなければならないと教育しなければなりません」
「歴史を通じても、私たちは見てきたではないですか。天の前に責任を果たすべき民族や人が責任を果たせない時に、どのような蕩減を受けてきたか、私たちは、見てきたし、知っています。そうであれば、皆さん、皆さんは日本に責任を負った人たちです。日本を愛する人たちです。そうであれば、日本が責任を果たすことができるように、最高責任者からひっくり返しておかなければならないですか、そうですか、そうではないですか。」
「今や日本の世界日報も、政治活動をするにおいて、教育材料とし勉強することができるように、そのように新聞社が発展しなければなりません。ここに世界日報の社長来たの?。名前も希望も出せない世界日報となっては、その名前が恥ずかしいです。世界日報は、世界を教育する新聞とならなければならないのに。政治界、学界、知識人たちが、まず第一に見る新聞として作らなければなりません、わかりましたか?」
「今まで国民連合や、勝共連合は何をしたの。これからは責任を120%果たすUPF活動とならなければなりません。(はい)返事だけせずに、深刻(原文ママ)に考えてみなさい。聖和6周年を迎えたのに、6年前、そのようにお父様が行かれると思いましたか。思いませんでしたか(思いませんでした)時を逃してはいけないのです。どれだけ切迫していて、一方では希望に満ちた勝利を堪能することができるこのような祝福を下さったこの時に、皆さんが奇跡をつくりださなければなりません。奇跡、わかりましたか?」
日本の総理大臣は韓鶴子に侍る存在!?
「国の指導者」とは通常「国家で最も政治的権力を持つ人物」を指す。日本で言うと内閣総理大臣である安倍晋三が該当する。韓鶴子の一連の発言は、日本の指導者つまり安倍晋三総理大臣を「自分たちに侍る存在」として見ていることに他ならない。
これまで統一教会は数十年に渡って自民党議員を中心に秘書・運動員などのスタッフ派遣を行ってきた他、近年の国政選挙では安倍首相の依頼で特定候補者に組織票を投入、教団関連媒体の『世界思想』や『世界日報』、そして2世信者組織・勝共UNITEなどを駆使しその政策を後押ししてきた。しかし今回、教団内部では安倍晋三総理大臣を屈服と教育の対象として見下していることが明らかになった。
こうして罪悪感を刷り込まれ、国家復帰の責務を負わされた日本の教団幹部が末端信者を駆り立て、末端信者が一連の正体隠し勧誘や霊感商法などを行ってきたという構図だ。
「奇跡」とは
韓鶴子の“み言”には『奇跡』という言葉が頻繁に出てくる。教団内部資料には「奇跡が起こる」として「氏族メシヤ、国家復帰、世界復帰」と記載がある。それぞれの信者が開拓者となって430家庭を伝道し、その430家庭が“神氏族メシヤ”として伝道活動をすれば、その先には国だけでなく世界が統一教会に教化されるという単純なネズミ算的思考が見てとれる。
韓鶴子に侍らされる日本の国会議員たち
2017年7月に山本朋広ら日本の国会議員団をアメリカ外遊へ連れて行ったUPFの梶栗正義会長が、翌月の集会で韓鶴子にこう報告していたことは当連載で触れた。
「私たちがお母様が準備してくださったアメリカの摂理を輝かせるために日本において何がなせるのか、宋龍天会長・徳野栄治会長と共に多くの悩みをしてきました。(中略)日本からも日本の国会議員をワシントンに連れて行ってNYのお母様に挨拶をさせる、これはどうだろうかと。このような計画を立てたわけです」
やはり日本の国会議員を韓鶴子に侍る存在として捉えていることが判る。
金正恩から韓鶴子への招待状
今年5月8日の韓国SBSの報道によると、同日、韓国“統一教(家庭連合)”の対外協力本部長が会見し「北朝鮮の金正恩委員長から今年1月1日に招待状が届いており、韓鶴子総裁が来年平壌に行く準備ができている」「世界平和国会議員連合に参加している全世界の国会議員約900人と一緒に行く案を考えている」と発表した。
世界平和国会議員連合に参加している日本の国会議員の中では、2017年2月、韓国で韓鶴子から直接国家復帰の指令を受けた自民党の山本朋広国防部会長・武田良太副幹事長そして柳本卓治参議院憲法審査会会長がこの韓鶴子訪朝団ご相伴議員の候補に上がる。
自民党の国防部会長や副幹事長を務める議員が、日本と時の総理大臣を見下す反社会的団体の最高権力者とともに北朝鮮へ行くのか要注目だ。
その他、2016年の米大統領戦直後に安倍―トランプ会談を実現させたとされ、外務省幹部が「不愉快な非公開ルート」と呼ぶ韓鶴子人脈が、安倍―金正恩会談もお膳立てをするのか注視される。
杉田水脈・柳本卓治・西村明宏…続々と発覚する統一教会系イベント出席議員
次稿では、今年4月に杉田水脈議員が勝共連合ダミー団体・熊本ピュアフォーラム主催のイベントで講演した案件や、翌5月に柳本卓治議員が出席し衆議院議員会館で開かれた日韓トンネル推進イベントなど、連綿と続く自民党国会議員と同教団の関係を検証する。(文中敬称略)
<取材・文/鈴木エイト(ジャーナリスト)>
【鈴木エイト】
すずきえいと・やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)
~引用資料~
PeaceTV HJグローバルニュース (2018年 9月 29日)
世界平和統一家庭連合公式チャンネル U-ONEニュース 2018年9月28日号