顧客と戦う
こんばんは! dnkspitz(ダンスクスピッツ)です。
システムエンジニアの経験が長かったので、お客様と議論することもよくありました。今日は、失注覚悟で、お客様と議論した経験を書きます。
あるお客様の環境がWindows7からWindows10に置き換わることになり、それに伴い、Windows7上で動いていたシステムを停止し、新たなシステムを開発することになりました。
私は、そのお客様から新システムの提案依頼を頂戴しました。提案依頼内容には、非常に短期間で新システムを開発・稼働させるという前提条件が付いていました。
システムで扱うデータの重要性および、既存システムの課題調査、設計、開発、テスト、検収、教育などの工数を考えると、かなり困難なプロジェクトになると考えました。
最初は、お断りせざるえないかと考えたほどの厳しいスケジュールでしたが、実現機能を絞り込み、提案書を作成しました。その後、お客様を訪問し、提案内容を説明しました。
提案内容自体は特に問題は無かったのですが、「新システムの稼働日を更に早めてほしい」との要望が出ました。
私は、既に厳しいスケジュールでしたので、その場で回答できず、一旦、持ち帰って検討後、回答することになりました。
その後、本番稼働時の実現内容を更に見直し、それをお客様が了承されるならば、スケジュールを1週間、短縮できると考えました。提案書を修正し、再度、お客様を訪問し、その旨を説明しました。
ところが、お客様(システム部門の責任者)からは「更に短くできないか?」 と の要望が出ました。
私は、これ以上の開発期間の短縮は、必要最低限のテスト期間が確保できなくなるため、品質に悪影響を及ぼし、運用後に大きなトラブルを発生させると判断しました。トラブルを起こしてしまうと、結果的にお客様にご迷惑をかけてしまいますので、それは絶対に避けなければなりません。
そこで、「申し訳ありません。これ以上の短縮は、リスクが高すぎます。もし、私が「できます」と言ってしまうと、お客様にご迷惑をかけることになります。現状の提案スケジュールで開発を行わせていただけないでしょうか?」と返答しました。
ところが、「スケジュールを短くしてもらわないと困るんだよ。なんとかできないか?」と詰め寄られました。
私は「申し訳ありませんが、お客様にご迷惑をおかけすることはできないので、このお仕事は辞退させていただくしかありません」と回答しました。
そうすると「仕事が無くてもよいのかね? 発注しないのだよ」と言われましたが、私は「はい。提案内容を真剣に考えてきた結果ですので、申し訳ありません」と回答しました。
私は、この提案書を作成した時点で、万一、これ以上の無理を言われたら、仕事を断る覚悟でいました。もちろん、仕事はいただきたいのです。しかし、最終的にお客様に迷惑をかけてしまったら、仕事どころではありません。
その後、長い沈黙が続きました……
私は、これ以上、座っていても仕方ないので、「それでは、申し訳ありませんが、失礼させていただきます」と営業と共に席を立ちました。
その瞬間です。お客様(システム部門の責任者)の横に座っておられたユーザ部門の責任者が「dnkzpitzさん、困りました。このまま引かれてしまうと、私達は困ってしまいます。なんとか、再考していただけないでしょうか?」と話されました。
私は「申し訳ありません。これ以上、機能を削ることもできないので、ご要望の納期を見直していただかない限り、開発できません」と回答しました。
すると、「今、説明いただいた納期で構いません。なんとか、開発をしていただけないでしょうか?」と回答されたのです。
このお客様には、以前にも他のシステムを開発・導入させていただいていることもあり、今回、仕事を辞退することの意味は誰よりも理解していましたので、私は、真剣勝負でした。その真剣さが通じたのだと思います。
私は「わかりました。精一杯、頑張らせていただきます」と回答し、受注に至りました。
その後、非常に厳しい開発期間が続きましたが、予定通り、稼働させることができました。
稼働後、半年以上経過したときに、再度、ユーザ部門の責任者にお会いする機会があったのですが、その時に「本当に助かりました。以前よりも使い勝手が良くなり、ユーザは喜んでいます」とのお礼の言葉を頂戴しました。
その一言は、非常に心に染みました。
ま・と・め
お客様の要望は常に正しいとは限りません。お客様の要望が、お客様にとって本当に価値あることなのか、お客様と議論することは双方にとって重要だと思います。
では、また。
dnkspitz
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