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若者の「死にたい」をどう受け止めるか?

NPO法人ダイバーシティ工房が運営するLINE相談「むすびめ」の1周年に伴い、若者の希死念慮を生み出す生きづらさについて考える対談を実施しました。釧路に拠点を置き活動するNPO法人地域生活支援ネットワークサロン代表理事でネットの居場所ポータルサイト『死にトリ』を運営する日置真世さん、自らも生きづらさをを抱える若者当事者である『死にトリ』運営メンバーのOさん、Hさんをゲストに迎えたトークの様子をお伝えします。
※対談イベント(2021/10/23):若者の「死にたい」をどう受け止めるか?の内容を書き起こしています

前編・「生きづらさ」と「認められる」ことの関係 ー必要なのは承認ではなく否定されないこと 

中編・私たちは人の話を最後まで聞けているか? ー決めつけてしまう言葉ー

生きづらさと社会のシステム

日置:自分にとって都合の悪い言葉を投げてくる人からは離れられるといいですよね。離れられるといいというか、離れることができる社会であるべき。

釧路での活動では、家族のもとから逃れて新しく生活をはじめる若者が多くいます。それは私たちが生活支援の場を持っているからできることなんですが、環境を変えることでだいぶ変わるなと実感しています。私たちはずっと合法的な家出場所の必要性を言ってきました。最近、少しずつ認知されてきましたよね。

佐藤:環境を変えるということのハードルが、もっと下がるといいですよね。

〈イベント参加者からのチャットコメント〉
誰かに認められないと経済を含め困難になると感じます


日置:そう、それなんですよ。社会に求められる人間にならないと所得が保障されないっておかしいと思うんです。

佐藤:社会的に認められる=生活できる、で結びついてしまっているのは確かにおかしな話です。

日置:今の状況と社会のシステムがいかに合わなくなってきているかを感じます。

たとえば、就労支援という言葉に違和感があります。学ぶ機会が十分に揃えられておらず、ときに社会の方がそれを奪うことだってあるのに、大人になって働けないという人を「支援する」という。

学ぶ機会を保障することがまず先ですよね。学校に行けなくなると他に勉強できる場所がない、進学したくても経済的にできない、学校に行けてもいじめで辛い思いをする。

これらを何とかせず、その結果働けなくなった人に対してちゃんと働きなさいって言ったり、それを「支援する」というのはなんか違うなと思ってしまいます。やっぱり社会のシステムの話になるし、そこを変えていかなければと考えてます。

佐藤:変えていくのと同時に、すぐには社会制度も追いつかない。だから『むすびめ』は、そういうときになんとか居場所でありたい。それをいかに実現させられるかを、今まさに考えています。

「死にたい」というまっとうな気持ち

佐藤:最後は、今回のトークのテーマでもある、「若者の生きづらさにどう向き合うか」について伺いたいです。私たちはどんな風に向き合うことができるのでしょうか?

日置:SNSやSNS相談があることで、若者が生きづらさについて声を上げ、私たちもその声を聞けるようになりました。

ただ、辛さを吐露し、言った分だけ辛くなる側面もあると思うので、実際に現実がよくなるということとセットでないといけないと思います。

だからできることを少しずつやる。特別何かすごいことをやるのではなく、少しずつ人の意識が変わっていくきっかけを作っていきたいです。

若者たちはどうですか?これからのことを考えると、いつもちょっと暗くなったりしちゃうんですけどね。

Hさん:そうですね。広く相談を聞けるようにはなったけど、その辛さに対して直接できることってやっぱり限られていたりもするし。今釧路ではできることもあるんですが、続けていくことのしんどさみたいなものも考えて、ぐるぐるしているところです。

Oさんはどうですか?

Oさん:うーん。希望がなくて(笑)

日置:まあそれはね、今の世の中で迷いなく「希望がある!」って言える方があやしいよね。

Oさん:でも、『死にトリ』の経験談を読んでいて、死にたい気持ちを抱えている人の方がものすごくまっとうなこと言っていたり、それを読んですごいわかるよ、って言っている人がいたり、今の社会を鋭く言い表しているなというものに遭遇すると、希望がないと感じる世界をしっかり見ている人がいるんだなと感じます。みんなこういう人たちの言葉をもっとちゃんと見て、考えてくれたらいいのになと思います。


日置:以前『つらサーチ』で「あなたにとって自傷行為とはなんですか?」という質問を出し回答してもらったことがあるんですが、深い回答というかすごい表現がたくさん集まったんです。生きるためにそうしていることとか、自傷行為との付き合い方とか、すごく伝わってきました。

その回答を見たある人は、「世の中の人はただただ黙ってこの回答をみてほしい」と言っていました。

Oさんの話にもありましたが、死にたいと思っている人の話こそ、ちゃんと聞くべきだと思いますね。そうしたら、なんか考えてできるんじゃないですかね。

聞いてあげる、じゃないんですよね。こちらが聞かなきゃいけないんです。


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