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【推薦文全文掲載】書店員歴40年のベテラン書店員が語る『スマホ時代の哲学』の魅力

2022/11/18に発売した『スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険』(谷川 嘉浩 著)が、発売当初から人気を集めています。中でも、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店の福嶋聡さん(書店員歴40年)からは、激賞の言葉をいただきました。
本記事では福嶋さんにいただいた推薦の文章を紹介します。

推薦文

昨年末、谷川さんの『鶴見俊輔の言葉と倫理』(人文書院)を読んで、ぼくたちは鶴見さんの思想をまったく知らなかったし、知ろうともしなかったことに、愕然としました。

谷川さんは同書で、鶴見さんの書き、話した膨大な言葉をしっかりと読み込み、デューイを研究してきたプラグマティズムの知識も盛り込みながら、そのことを読者に思い知らせてくれたのです。

その読書量と、的確な引用に唸らされました。しかも1990年生まれと知り、日本の哲学界にすごい若手が現れたことを嘉しました。そう、思想界ではなく、明らかに哲学界というべき人材です。

この『スマホ時代の哲学』も、検索容易な時代の手軽な哲学的思考という安易な入門書、自己啓発書ではなく、むしろその真逆。「スマホ時代」にむしろ逆行するじっくりとした哲学的思考を勧めているのです。しかも先人の思考を尊重する姿勢をも含めて。

オルテガの「自分が迷っていると実際には感じていない人は、間違いなく迷う」という言葉を引用し、現代社会の釈然としない「モヤモヤ」「消化しきれなさ」「難しさ」を回避せず、「自分の頭で考える」の代わりに、「他人の頭で考える」;「他者の想像力を自分に取り入れる」ことを勧めています。

そして、「自分の直感に基づいて思考し、それを言葉にしていく営み」ではなく、「哲学の歴史を重視」するというのです。先人の思考を尊重するその姿勢を、ぼくはとてもいいと思いました。

ぼくが書店の仕事をはじめてまもなくの今から約40年前、ポストモダンの旗手として颯爽と登場した浅田彰さんの『構造と力』の、誰もが実は本文は理解できなくとも熱狂した「序に代えて」を思い出しました。

時代はまだバブルの余韻を残し、浅田さんの思考は軽やかで、谷川さんのそれは釈然としない「モヤモヤ」「消化しきれなさ」「難しさ」を大切にする、むしろSurvivalを意識した重みがありますが、時代を反映し、多くの読者を引きつける魅力を十二分に共有していると思います。

いつになく、長々とご紹介したのは、
ぼくが惚れ込んでいることの証しとお受取りください。

(MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 福嶋聡)

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著者について

谷川嘉浩(たにがわ・よしひろ)
1990年生まれ。京都市在住の哲学者。
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在、京都市立芸術大学美術学部デザイン科講師。
哲学者ではあるが、活動は哲学に限らない。個人的な資質や哲学的なスキルを横展開し、新たな知識や技能を身につけることで、メディア論や社会学といった他分野の研究やデザインの実技教育に携わるだけでなく、ビジネスとの協働も度々行ってきた。
単著に『鶴見俊輔の言葉と倫理:想像力、大衆文化、プラグマティズム』(人文書院)、『信仰と想像力の哲学:ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』(勁草書房)。共著に『読書会の教室』(晶文社)、『ゆるレポ』(人文書院)、『フューチャー・デザインと哲学』(勁草書房)、『メディア・コンテンツ・スタディーズ』(ナカニシヤ出版)、Neon Genesis Evangelion and Philosophy (Open Universe)、Whole Person Education in East Asian Universities (Routledge)などがあるほか、マーティン・ハマーズリー『質的社会調査のジレンマ:ハーバート・ブルーマーとシカゴ社会学の伝統』(勁草書房)の翻訳も行っている。

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