
シリコンバレーで注目されるカルチャーの重要性『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』【無料公開#3】
8月28日発売の『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』。マクドナルド・メルカリ・SHOWROOMで事業と組織の成長を加速させてきた著者が、カルチャーを言語化し共有化するための手法をご紹介いたします。組織運営に悩む経営者、人事担当者、マネージャー、すべてのはたらく人に向けて、「新しい組織論」を無料公開にて連載いたします。
シリコンバレーで注目されるカルチャーの重要性
海外へ目を向ければ、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)をはじめ優れたテックカンパニーを中心に、カルチャーをもとにした組織運営や人事施策が広く知られるようになっています。
たとえば、グーグルでは、データアナリティクスをもとに考えられた人事施策についてまとめたサイト「re:Work(リワーク)」(*1)において、成果を生むチームの条件を「心理的安全性」「相互信頼」「構造と明確さ」「仕事の意味」「インパクト」が重要だと定義しています。
特に、チームメンバーがリスクを取ることをいとわず、お互いに対して弱みをさらけ出してもいいと感じられる「心理的安全性」の重要性に関しては、多くの方が指摘する通りです。
アマゾンでは、「働く人すべてがリーダーである」という考えのもと、「リーダーシップ・プリンシプル」(*2)を公開。
「顧客視点」「オーナーシップ」「革新と創造」「常に学び、好奇心を持つ」など14項目からなる行動指針を定めています。
最近ではネットフリックスの「カルチャー・デッキ」について、フェイスブックCOO(最高執行責任者)のシェリル・サンドバーグが「シリコンバレーから生まれた最高の文書の一つ」と評し、大きな話題となりました(*3)。
『NETFLIXの最強人事戦略―自由と責任の文化を築く』(パティ・マッコード著・櫻井祐子訳・光文社)のなかでは「マネジャーは自分のチームだけでなく会社全体が取り組むべき仕事と課題を、チームメンバーにオープンにはっきりと継続的に伝える」「徹底的に正直になる。同僚や上司、経営陣に対して、時期を逃さず、できれば面と向かって、ありのままを話す」「事実に基づくしっかりした意見をもち、徹底的に議論し検証する」などが「企業文化を支える基本的な行動規範」として紹介されています。
これらの企業は高い生産性と国際競争力もさることながら、何よりも世界中から優秀な人材を集め続けています。
彼らは高い給与や充実した福利厚生に惹かれるだけではなく、企業が明らかにしているカルチャーに惹かれ、共感し、働きやすさや働きがい、社会的なインパクトを求めて入社しています。カルチャーそのものが求心力となっているのです。
カルチャーは企業ブランディングにも直結する
あなたも自分の働く会社を選ぶとき、「(会社名) 評判」と検索したことがあるかもしれません。
インターネットでは「OpenWork(オープンワーク)」や「en Lighthouse(旧名:カイシャの評判)」といった社員の口コミや評判をまとめたサイトや、ソーシャルメディアの書き込み、ブログの退職エントリなど、実際にその会社で働く社員のリアルな声を目にすることができます。
そこで「上司の言うことが絶対で、反論できない雰囲気」「社員が社長の顔色ばかり見て仕事をしている」などの口コミが書いてあれば、どんなに企業の公式サイトで「オープンマインド」「トランスペアレンシー(透明性)」「フラットな社風」といった耳触りのいい言葉が並んでいても、信じられなくなってしまうでしょう。
カルチャーは、企業としての「ブランディング」に直結するものだと言っても過言ではありません。
インターネットの発達やソーシャルメディアによって、誰もが発信することが当たり前になりました。
どんなに企業がコーポレートサイトやリクルートサイトに投資して、「素晴らしい企業」と印象づけようとしても、実態が伴わなければ、それを隠し通すことはできません。
そしてカルチャーは社員のみならず、消費者やユーザーの行動にも影響します。
たとえばアウトドアブランドのパタゴニアでは、ミッション・ステートメントを「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」と定め、「最高の製品をつくる」「ビジネスを手段に自然を保護する」など4つの行動指針を掲げています(*4)。
消費者はこうしたパタゴニアの理念や姿勢に共感し、製品を購入し、ブランドのファンとなっているのです。
企業に対する期待が予想通り、あるいはそれよりも上回ったとき、社員、あるいは顧客のエンゲージメントは高くなります。
その反対に「思ったような会社ではなかった」「期待していたほどの製品ではなかった」と感じるようであれば、社員は会社を辞め、顧客は二度と製品やサービスを購入しないでしょう。
「期待値ギャップ」は社員はもちろん、顧客にも関わることです。
顧客は、企業の製品やサービスを通じて、企業ブランドを感じ取ります。
しかし、その製品やサービスを提供しているのは、あくまでその企業の社員である人材です。
つまり、社員一人ひとりの行動や言動そのものが、企業のブランドイメージに大きく影響することになります。
逆に言うと、自社ホームページなどでどんなに聞こえのいいことを書いていても、社員一人ひとりがそれを体現していなければ、顧客の中に適切なブランドイメージを築くことはできません。
ブランドとは企業側だけで決定できるものではなく、本質的には顧客の頭や心の中にあるものだからです。
だからこそ、カルチャーを社内に浸透させることで、一人ひとりの社員の行動・言動を通して企業ブランドを顧客へと正しく伝達する必要があるのです。
企業としてどんなカルチャーを目指し、製品やサービスを通じてどう体現しているのか。
そのカルチャーが実態を伴うものであるかどうか、そしてそれをいかに社内外へ浸透させるかが、カルチャーモデルを推進するうえで重要なのです。
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「閲覧320万回:Facebookのシェリル・サンドバーグが「最高のシリコンバレー文化」と絶賛したNetflixの企業カルチャー・ガイドとは?」(『TechCrunch Japan』)
*4 (https://www.patagonia.jp/company-info.html)
著者プロフィール
唐澤俊輔(からさわ・しゅんすけ)
Almoha LLC, Co-Founder
大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。
2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事・組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。
2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引すると共に、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。
2020年より、Almoha LLCを共同創業し、人・組織を支援するサービス・ツールの開発を進めつつ、スタートアップ企業を中心に組織開発やカルチャー醸成の支援に取り組む。
グロービス経営大学院 客員准教授。
8/28に本を出版できることになりました!Amazonで予約もスタートしています〜
— 唐澤 俊輔 『カルチャーモデル』著者 / Almoha LLC, Co-Founder (@karacchi_) August 9, 2020
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、ありがとうございます!!
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