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書き出しカルタを作って遊ぶ
今回の台風は遅いですね🌀関東は涼しく、曇り空です
外は大雨で、仕事も忙しく、家の中で朝から晩までPC画面しか見ていない、これで本当に生きていると言えるのか、そんな一日(8/29)。風呂に入って夜十時、何か人間らしいことがしたいと家の中を見回すが、本を読むエネルギーはない。
さて、どうしよう。そんな時に思いついたのが「書き出しカルタ」である。好きな書き出しを五十音集めてカルタにしてみるのだ。いきなり全音はハードルが高いので、1列につき1つ、好きな書き出しを並べてみた。
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以下に列記する。①家にある②すべて違う作家の作品、という条件を課した。条件①のせいで海外文学メインに椎名誠が混ざる妙なラインナップになったが、我ながら良い選書だ。どれもとても面白い本である。
「い」
いまではどんな人間も、人生の意味を自分の中に見つけ出す方法を知っている。
「こ」
この夏、陸前江ノ島というところにホヤを食いに行ったのだ。原索動物尾索類海鞘目のホヤである。
「し」
春琴、ほんとうの名は鵙屋琴、大阪道修町の薬種商の生れで歿年は明治十九年十月十四日、墓は市内下寺町の浄土宗の某寺にある。
「つ」
つい先日私は、航空便で、ある結婚式への招待状を受け取った。
「な」
長い歳月が流れて銃殺隊の前に立つはめになったとき、恐らくアウレリャノ・ブエンディア大佐は、父親のお供をして初めて氷というものを見た、あの遠い日の午後を思いだしたにちがいない。
「ひ」
秘密にしていたけれど、一九四一年の秋、マリゴールドはぜんぜん咲かなかった。
「め」
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
「よ」
夜明けまえの暗闇に眼ざめながら、熱い「期待」の感覚をもとめて、辛い夢の気分の残っている意識を手さぐりする。
「ろ」
ロリータ、我が命の光、我が腰の炎。我が罪、我が魂。ロ・リー・タ。舌の先が口蓋を三歩下がって、三歩めにそっと歯を叩く。ロ。リー。タ。
「わ」
私は、かつて晩年を迎えたことがある。この言い方は、いかにも奇妙だが、あの数ヶ月を、どのように形容すべきかと、ふと思う時、ああ、やはり晩年という言葉しかないと思うのだ。
良い本は書き出しも良い、としみじみ思う。さりげなさの中に、作家が心を砕いた様子が感じ取れる文章が好きだ。「この本とこの本はどっちも『あ』で始まるんだなあ」という落胆(?)もあり、少しは人間的なことをした気になれた。
どの国のどんな本でもフラットに扱えるのがカルタのいいところだ。文学的価値もジャンルも関係なく、好きな本の好きな文章がただ横一線になる。いつか、読んだ本だけで「書き出しカルタ」を完成させてみたいものである。
(おわり)
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