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ボリチョップとメリーゴーランド【ウガンダの貯金事情】

年内は日本です。今日の関東は寒いです〜

世界どこでも、お金は悩みの種。使い道はもちろん、貯金にも社会が出ます。日本では銀行預金が多いですが、ウガンダ・アチョリ地域では、グループセービングが一般的です。和訳すると、グループ貯金とでもなるでしょうか。

グループ貯金はあるグループの全員が一定額を定期的に積み立て、現金のプールを作ります。一人一人の負担は小さくても、全員分を集めると大きな額になる。積み立てた資金の運用方法には大きく分けて2つのパターンがあります。それがボリチョップとメリーゴーランドです。何じゃそりゃ?

グループ貯金の集会の様子
(顔がはっきり写らないように解像度を下げています)

グループ貯金の種類

①メリーゴーランド
積み立てたお金を毎回小数名に分配します。例えば、10人のグループでひとり一回100,000ウガンダシリング(約4,000円)を毎月積み立てるとします。これを毎回一名に配る場合、10ヶ月に一度、40,000円の収入が手に入るわけです。言わば、総取り制。アチョリ語では、カルル(Kalulu)と呼ばれます。

メリーゴーランドの良さは一度にまとまった金額が手に入ること。子供の学費、ビジネスの元手、住宅や日用品の購入など、使い道は様々です。お金を受け取る順番はくじで決めます。日本でも、頼母子講(たのもしこう)という名前で昔行われていました。

②ボリチョップ(VSLA)
集めた金を口座(アカウント)として保管し、個人が借りられるようにします。いわば、村の寄合が作る小さな銀行です。農家は銀行からお金を借りるのも一苦労。グループ口座からまとまったお金を借りることができるのは貴重です。

でも、利子が高いんですよ。色々聞いたんですが、3ヶ月で10%の単利が感覚的な相場。3ヶ月で播種から収穫まで完結する作物はないので、農業の元手に借りるなら、確実に利子を支払うことになります。農作物は枯れたり思うように売れなかったりするので、利子は大きなリスク要因です。

ちなみに、利子は一年間保管して、期末に全員へ分割したり、パーティーに使ったりします。全員に配当が還元されるのですね。

アチョリでは、2006年の内戦終結後にNGOやドナーがVSLA(Village Savings & Loans Associations)と呼ばれるグループ貯金の仕組みを広めました。今でも農家の多くはVSLAのグループに所属しています。これだけグループ貯金が普及しているのは、アフリカの中でもかなり特殊。

それにしても「ボリチョップ」とは変わった響きだ。由来を聞いたら「落としてチリンと鳴らす」(アチョリ語でBol i cup)という意味だとか。昔は小銭で貯金していて、小さく口の空いた金庫に小銭を落とした時に「cup」(チョップ)という音がしたそうです。オノマトペだったんだ。面白い!

上の写真はVSLAに使用する道具一式。帳簿と金庫、スタンプが見えます。帳簿は全体のものと個人のものがあり、会計担当が一回の取引で二つの帳簿に同じ内容を記入します。金庫にはNGOのロゴが薄く入っています。

グループ貯金のメリット

さて、当然の疑問が湧きます。「グループで貯金なんて面倒なことをするより、自分で貯金すれば良いんじゃないの?」というのがそれ。同僚に質問したら、メリットを聞くことができました。

①浪費が防げる
グループ貯金は定期預金です。お金の手に入る時期に制限があるので、浪費が防げると言います。ボリチョップでは、お金を借りる時に使い道をメンバーに宣言しないといけないようです。

同僚は「お金が手元にあると注意しないと使っちゃう」と笑っていましたが、別にアチョリの人が浪費家ということではなさそうです。一箇所に持っていると、お金を親戚にねだられたりするんじゃないかなというのが僕の見立て。

②人とつながる
グループ貯金には基本的に例会があります。農家のグループは週一回、平日午後に集まって積み立てるところが多いです。家族で農業することが多い農家には、情報交換や交流を深められる、大切なコミュニケーションの場です。

③現金は危ない
農家は気軽に銀行へ行けません。現金は、ベッドの下や、封筒に入れて屋根や壁に押し込んで隠しておくことが多かったそうです。でも、強盗や火事の危険がある。

今でも多いのは、お金を牛やヤギなどの家畜として「貯金」する方法です。家畜は子供を産むし、育つと高く売れます。でも、病死や盗難のリスクもある。アチョリ東部では、隣のカラモジャ地域から牛泥棒が襲来することもあり、これも安全とは言えません。

グループ貯金は「銀行に行けない」「浪費したくない」「人とつながりたい」「資産を安全に保管したい」アチョリの人びとのための合理的な貯金方法なのです。

(おわり)

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