裏打ち報告2024年5月「まさかアナタで失敗するなんて」の巻
2023年の夏から不定期に墨の作品の裏打ちの過程を報告しておりますが
前回「せめて一ヶ月に一回くらいは実践して百発百中の裏打ち名人になりたい」的なことを申しておりましたワタクシ、結局あれからこの五月までしっかりサボっておりました。
宣言したことを実行しなかったがために起きた必然の結果なのでしょうか、記事タイトルにありますように、今回派手に失敗しました。
一回目の挑戦よりも、派手に!失敗!
よりにもよって!ア、ナ、タ、で!
……あ、うるさいですね。こんな妙な騒ぎ方をしていると報告を始める前に記事を閉じられちゃいますね。失礼いたしました。
ではその失敗も含めて報告を開始いたします。
今回裏打ちをした作品はこちらの三点。
左のワタリガラスと中央のハイタカはnoteでお披露目済みです。
右の紅色を使った梅の枝は、作品として残すためではなく「水彩絵の具でも裏打ちに溶けずに耐えられるのか」という実験をするために今回一緒に裏打ちをすることにしました。
水彩絵の具が使えるならわざわざ水墨画に時々少し使うだけのために顔彩を買うこともないのではないか、と思って前々から予定していた実験だったのですが、結局この実験をする前にドイツAmazonでも販売している呉竹の顔彩のセットを買いました。近々墨以外の色を入れた水墨作品をお披露目できるかもしれません(個人的には、水墨画は墨の濃淡だけで描かれた作品のほうに強く惹かれるのも事実ですが)。
今更言うまでもないと思いますが、一応おさらいしておくと、書や水墨画を制作する和紙や中国紙はとても薄いため、描いた(書いた)だけでは紙が波打っていて展示のための体裁が整っていない状態です。そのため作品がしっかり乾いたら(絵の完成から少なくとも一ヶ月から半年は待つのが良いと思います)作品をまっすぐ平らに、かつ強固にするため裏打ちをします。
私は自主制作の作品で気に入ったものを自分で裏打ちするようになりましたが、注文で書いた書の作品などは表装に出しています(もちろん日本の表装屋さんへ)。
前置きが長くなりました。
今回も裏打ちの手順も道具も前回までと同じです。
まず裏返した作品に霧吹きでほとんど水浸しになるほど水をかけ
刷毛で皺を伸ばします。
そして、こちらの額縁のガラス板の上で裏打ちの紙に
バットの中で水で伸ばしたフエキ糊を塗り付け
先ほど水浸しにした作品の裏に糊を付けた面を重ねます。
そしてしっかり貼り付けた状態で持ち上げ、裏向きのまま壁(タンスの扉)に貼り付けます。
余白の糊で扉には貼り付いていますが、乾いてくると隅から剥がれてきてしまうため、紙テープで固定します。
実はワタリガラス、裏打ちの紙の大きさが作品の大きさよりほんのちょっと大きいだけのものを用意してしまい、重ねるのにも苦戦したのですが、裏打ち終了から二時間ほどすると、このように
ボコボコ浮き上がってきてしまいました!
しかし、もう打つ手はありません。もう一度やり直せるか?と思い、「固まったでんぷん糊を柔らかくする方法」なんていう言葉を検索にかけてみましたが、「水と熱を使え」との答えしか見つからず。水はまだしも熱って……?ワタリガラスを熱湯にぶち込めと……?
待つこと約三日。
後の二枚はきれいに仕上がっている模様。
そろそろいいだろう、と剥がしてみました。
完成品の四隅を切り落とした状態です。
ああ、見るも無残なボコボコ。
これは「もっと格好良いワタリガラスの作品を仕上げよ」とのお告げなのか「裏打ちの修行を怠るな」というお告げなのか。
き、きっと、両方ですね。
精進いたします。
以上、2024年五月の水墨作品裏打ち報告書でした。