こういう映画を日本が作れてよかった 『サンドランド』感想
映画『SAND LAND』を見てきた。
原作は鳥山明の短編漫画。未読の状態で視聴。
公開直前だけでなく、だいぶ前から映画館に行くたびに予告編を見せられていた。そこから、めちゃくちゃこの作品にカネをかけてるんだなというのは感じていた。残念ながらその予告編は全然ワクワクしなかったが。
正直、「これは売れないだろうなぁ…」と思っていた。
で、予想通り、広告の割には売上は苦戦している。だいぶ前に公開された「君たちはどう生きるか」は1日に4本くらい公開しているのに、サンドランドは2本だけだった。劇場にも人はまばら。なんか悲しいなぁ。
ただ、視聴した後の感想としては、めちゃくちゃ面白かった。
一言で感想を言うと、「日本がこういう映画を作れてよかった」という感想。変に凝ったストーリーや設定はなく、シンプルな話で面白い。こういう作品を日本が作れたのが、凄く嬉しかった。
批判するところがほとんどない
マジで悪いところはほとんどないと思う。テンポよし、キャラ描写よし、アクションよし。
パラメータにしたら、間違いなくオールAだ。
往年のジブリ作品を見ているかのような、完成度の高さ。何かしらケチをつけたくなるのが自分なのだが、作品全体を通してそういった箇所はほとんどなかった。
唯一あるとすれば、主人公が街の保安官なのに、盗みをしたこと。
悪の軍隊相手とかではなく、魔物を使って普通の市場から盗みをするのは少しモニャモニャした。
が、それ以外はそれぞれのエピソードも、「ありがち」ではあるものの、退屈することなく描かれていた。映画作りのお手本となるくらい、良い脚本だったと思う。
現実的な反抗をする大人っていいよね
今作品で一番好きなキャラは、主人公でも、看板役のベルゼブブでもない。
敵として登場するアレ将軍だ。
舐めた髪型、いかにもなセリフから、完全なかませキャラかと思いきや、ドンドンとカッコよくなる。シンプルに優秀な男なのだ。
まぁ予想通り、後半では主人公たちに協力することになるのだが、その協力の仕方が凄く好きだ。仕事を持っている「大人」として協力する。
彼は軍人で、責任がある立場。だから、主人公たちのように、世間の目を気にせずに大暴れすることはできない。自分の立場を守りながら、主人公たちにそっと協力する。このポジションのキャラが自分は大好きなのだ。
こういうキャラで思い出すのは、『紅の豚』のフェラーリン。おそらく、ほとんどの人が記憶にないだろう。
主人公であるポルコの空軍時代の元同僚で、今や大佐という出世した人物。犯罪者として懸賞金をかけられているポルコに対して、空軍に戻れるように動いてくれたり、その申し出を断ったポルコに対して、ひっそりと協力したりする。
思い切り犯罪行為を犯したり、主人公たちとバカ騒ぎをするのではなく、大人として、ほんの少し手助けをする。社会の歯車として生きる一人の大人として、友人にできる限りのことをする。
自分がスーパーヒーローになれないことを年を取って自覚すると、こうした「カッコいいモブキャラ」の生き方ができる大人に憧れるのだ。
国産アニメ映画であることの意味
本当にいい作品だった。
中盤の戦車戦なんかは、アニメ史に残る渋くてカッコいい戦車戦だったと思うし、どのシーンもしっかりとした魅力があった。
シンプルなストーリーなので、映像に没頭できる。
逆にいうと、シンプルなストーリーなので、人生に深く何かを残す作品ではない。単純な娯楽映画として見る作品だ。
何も考えずに、誰でも楽しめる作品を作る。これって凄くハードルが高いことだと思う。
最近の作品だと、スーパーマリオブラザーズもそうだった。
でもあの作品は、任天堂が育てあげた「スーパーマリオブラザーズ」という巨大なIPがあったからこそ、生まれた感動もあったと思う。
国産アニメ映画で、巨大なIPに頼らず、ここまで面白いと思える作品を生み出したスタッフは本当にすごいと思う。そこは素直に褒めたい。
何よりも、作品に対しての愛がしっかりと存在していた。
国産アニメ映画で、こういう作品が誕生してくれたことが自分は素直に嬉しい。
でもあれだけ宣伝しちゃうと、逆に萎えて見に行かない人も多そうだよなぁ…こういう映画こそ、「君たちはどう生きるか」みたいに、宣伝はほぼなし、口コミでじわじわと売れてほしかった。
以上。
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