ゲーム屋人生へのレクイエム 86話
俺個人との契約を求める元上司と会社との契約にしたい俺との意見の違いをどうまとめるか一計を案じたころのおはなし
「8年ぶりにOの本社に行ったんだよ。懐かしくてね。知ってる人もいて挨拶したりしてね。
会議室に通されてしばらくするとK部長と本部長が入ってきたんだ。本部長も工場で働いていた時の先輩で当時は課長だったんだけど昇進してえらくなってたんだ」
「よう。ひさしぶりだな。元気そうじゃないか」
「本部長。ご無沙汰しております。おかげさまで元気にやっております」
「お前がOを辞めてどのくらい経つんだ?」
「8年です」
「早いものだな。もうそんなになるんだな」
「はい。あっという間でした」
「ところでK部長からいろいろとお前に相談してるはなしだが、どうだ?お前に頼むしかないんだが、やってもらえないか?」
「そのおはなしなんですけど、ちょっと今回はこちらから提案がありまして、ご検討いただきたいのですが」
「どんな提案なんだ?」
「実は会社を買っていただきたいのです」
「え?」
「私が勤めるアメリカのA社をこのO社に買ってもらいたいのです」
「どういうことだ?」
「Aは家庭用の移植の仕事を主に事業としていますがそれだけでは経営は難しいのが実情です。O社ではアメリカでの事業を展開する拠点が欲しいところだと思います。いかがでしょう、両者の求めるところには共通するところがあると思いますが、会社の買収を検討いただけませんか?」
「ちょ、ちょっと待て。冗談じゃないだろうな。上司の了解は取っているんだろうな?」
「はい。上司の了解は取っております」
「むう。確かに今後の展開を考えれば拠点は欲しいところだが会社の買収となると俺の判断できるレベルのはなしじゃない。おい、K部長、常務をお呼びするんだ。常務にもこの件聞いていただこう」
「常務をお連れしいたしました」
「常務。彼が以前アメリカ子会社で生産を担当していて今回のプロジェクトでサポートを依頼している人物です。それで彼から彼が勤める会社の買収提案を受けました。さあ、常務にご説明差し上げてくれ」
「ご無沙汰しております常務。本部長に先ほど提案させていただきましたが、私どもの会社を買収していただきたいのです。私どもの会社には必要なリソースはすべてそろっております。買収いただければすぐに事業活動が始められる状態です。いかがでしょうか?」
「おお君が今回のはなしの相手か。しかし、唐突なはなしを持ってきたな。確かにアメリカでの事業は一度は撤退したがあらためて進出したいと考えているところだ。うーむ。いったいいくらで売るんだ?」
「値段についてはわたくしの上司であります本社の担当が交渉させていただきます。居抜きでアメリカに子会社ができるとお考えいただければ決して高くないお値段で交渉させていただきます」
続く
フィクションだよ