音楽解説: "Chan Chan" - Kiko Navarro feat. Linet Varela
原曲はキューバは「ソン」の、どちらかと言うと田舎臭さの漂う長閑な作風だが、このテイクではそこに(商業化される以前の)キューバン・サルサと若干のスパニッシュ・テイストが加わることで、新曲のような初々しさがプラスされた。
往々にしてリメイクはその命運が五分五分に分かれて行く。上手く行けば鮮度をさらに増すことが出来るが、しくじった場合には二番煎じよりもさらに劣化した仕上がりになるところがカバー曲の怖いところかもしれない。
編曲家やプロデューサーの手腕が大きく問われ、お里が知れる。
Kiko Navarroは古今東西、古きも新しきも何でも再調理して行く大胆さを持ち合わせるが、同時に編曲に要する音の調味料を無限にストックしている彼の脳内はまさに宇宙だ。
この作品「Chan Chan」はたった4種類の循環コードで楽曲を下支えして行く。
その4つのコードがループする中で何の工夫も為されなければ、聴き始めてから1分30秒もすれば飽きて来る。だがこの曲の場合は足すことなく「引く」楽器編成を途中で挟んで行くことで、むしろ環境のフィールドを拡げて行く。
そして後半にホーンセクションを足したかと思ったらあっと言う間に楽器を引いて、ヴォーカルとコーラスだけを温存させて楽曲の最後まで難なく突っ走って行くあたり、思わず「大黒屋。お主も悪よのう‥。」と声が出そうになる圧巻の出来栄えだ。
Written by Didier Merah
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