タンパク質は内臓の負担?
「タンパク質を摂ることは良いことだ。」度々そのような内容の記事をあげているが、よくこの質問を受ける。
「タンパク質摂ると内臓の負担になると聞いたんだけど…」
タンパク質摂取で負担が増す臓器。考えられるのは肝臓、胃、そして腎臓だ。
結論から言えば、「それぞれの臓器にトラブルを抱えている人でなければ問題なし!」
そのエビデンスに迫ってみよう。
① 肝臓とタンパク質
肝臓の主な働きの一つに【解毒作用】というものがある。実はその作用が弱っているとしたら、タンパク質摂取は身体にとって有害となる。
タンパク質の最小単位はアミノ酸という。それを表す化学式はNH₂だ。
化学式で考えると分かりやすいのだが、それに水素が一つくっつくだけで、NH₃ つまり【アンモニア】に化けるのだ。
アンモニアは言うまでもなく有害であり、身体にとっては毒素だ。もし肝臓の解毒作用が失効しており、体内のアンモニア濃度が上昇したら肝性脳症を発症し死に至る。
タンパク質を分解する過程で必ずアンモニアは生じるが、肝臓の【尿素回路】という働きにより無毒化される。タンパク質→アミノ酸→アンモニア→尿素といった感じに。
だから肝臓が元気な人であれば安心してタンパク質をとって大丈夫だ。もしお酒などで肝臓が疲れている際に大量のタンパク質を摂取する人はご用心。
② 胃とタンパク質
タンパク質は消化、分解が難しい。それを行う酵素は総称して【プロテアーゼ】といわれる。
胃で分泌される消化酵素はペプシン。膵臓で分泌されるのはトリプシンとキモトリプシン。最後に小腸でペプチターゼが最小単位のアミノ酸まで分解して吸収するという過程だ。
栄養素というのは、【鎖】をイメージすると分かりやすい。消化、分解とは長〜い鎖を、シンプルな短い鎖にする作業だ。
糖質はそもそも鎖が弱く、しかも消化酵素が口腔からも出るため簡単である。脂質は乳化さえ行えば簡単に分解出来る。
しかしタンパク質はその鎖が強い。あなたが風邪を引いた時に、消化の良いものなら何とか食べられるが、分厚いステーキを食べる気にならないはずだ。
市販されているプロテインは体内に入れると、比較的分解、消化が簡単にできるに作られている。それでも運動中などは控えるべきとされる。
なぜならやはり「タンパク質は消化に悪いから」だ。運動中は全身の血液が筋肉を循環する。動いている時、内臓に血流のリソースは割けないのだ。
胃をはじめ、消化器が不調の時にタンパク質を摂取する事はおすすめできない。
③ 腎臓とタンパク質
タンパク質を摂りすぎる健康への影響で最も議論されているのは、実は腎臓なのだ。
1980年代の動物実験で、アミノ酸注入に伴う糸球体濾過量の増加や、タンパク尿、糸球体硬化症が発見されたことが起源とされる。
機序としては一酸化窒素による血管拡張が考えられている。
しかし高タンパク質摂取が腎機能を悪化させたという明確なエビデンスは未だ報告されていない。
むしろタンパク質摂取量が低いほうが腎機能を悪化させるデータのほうが多い。
タンパク質摂取はある程度上限が決まっている。だいたいの目安だが、運動をそんなにしない人であれば0.31g/kg体重以上のタンパク質を、1日数回に分けて1.6g/kg体重を目指すことがオススメだ。
タンパク質は一度に大量に摂取すると内臓の負担になりかねない。だから、小分けにする。しかもそのように頻度を増やして摂取した方が筋肥大を促進するエビデンスがある。
食間を3時間以上空けることで、その次のタンパク質摂取が筋肥大にとって有益な事を示すエビデンスも存在する。
覚えておいて欲しいのは、タンパク質は1日で数回に分けて摂取がオススメ。
ということだ。