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同じ鍋を食らわば

数日前、私が加入している音楽ユニットのメンバーのお一人が我が店へ飲みに来てくださった。その日はそれほど他のお客様はおらずゆったりと営業していたので、カウンターを挟みながらその方と沢山のお話をした。

なお、我等がユニットの正式メンバーは現時点で総勢五名で、店に来てくださった方が最年長、私が最年少である。その方を含め正確な年齢を存じ上げない方もいらっしゃるのだが、最年長と最年少が平均年齢からかなり離れており、残る真ん中の三名は同世代くらいということは何となく知っている(※その三名もどちらかといえば私の方に近い)。改めてそう考えると、我々は「音楽」という共通の趣味嗜好があったからこそ出会えた訳で、それが無ければ私と最年長の方、そして三名は全く交わることなく生きていたであろう。普段は「奇跡」だとか「運命」といったスピリチュアルめいたワードを使うのは胡散臭くて嫌いなのだが、こればかりは奇跡的なことだなぁと思う。

そしてその上で私が思うのは「メンバーとは『音楽』という共通項を一緒に楽しむことができれば良くて、それ以外の個人情報は無理に知る必要がない」ということである。「一緒に音楽や演奏を楽しめるのであれば、他には何も要らないですよね」と私が話し掛けると、来てくださったメンバーも深く頷いた。

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改めて、私には各メンバーについて知らないことがそれなりにある……気がする。例えば各々が普段はどういう仕事をしているか、何となくは聞いたけれどはっきりとまでは知らないし、正確な年齢や出身地を知らない方もいる。ていうか、何なら我々は活動時にユニット内での芸名を名乗っているので、本名を知らない方もいらっしゃる(※正確には読みは知っているが表記を知らない)。

そして恐らくは各メンバーも私について知っていることはそれほど無いのではなかろうか。職業に関しては自身の職場(店)に来て頂きたいという思いから大々的に公表しているが、それ以外のことはぼそっと小出しにする程度しか話していない(気がする)ので「大部分は謎に包まれたメンヘラ小娘」という認識の方もいらっしゃるであろう。何なら名前なんて、私のユニット内での芸名は本名をもじったものではなく、SNS上でのハンドルネームを更にもじったものなので、とりわけメンバー内でもややこしい事になっているし……(笑)

だがしかし、やはり私はそれで良いと思っている。何度も言うが、我々にとって大切なのは各々のパーソナルな部分を知ることではなく、音楽という全員共通の趣味嗜好を心から楽しむことだと思うのだ。だからと言って決して「皆さんの個人情報なんて一切知りたくありません!教えないでください!」とは言わないし、偶然知り得たならそれはそれで「なるほどそうなのか」とは思うだろうが、趣味の部分での共通意識や団結力があって、一緒に音楽を奏でられるならそれで充分ではなかろうか、と少なくとも私個人は考えている。まあ、もしかすると演奏する楽曲によっては各々世代や好きな音楽のジャンルが違ったりする為に、各人がそれぞれの生い立ちの中で聴いてきた音楽を理解する必要はあるかも知れないけれど。

と、偉そうに持論を語ってみた訳だが、例外的にただ一つほんの少しだけ気になる部分がある。それは「皆の好きな食べ物」である。

何度も何度も記すが、私は特に各人の正確な年齢、生年月日、出身地、血液型、そして本名を無理をしてまで知りたいとは思っていない(偶然知り得たならまあそれはそれとして)。しかしながら、ふと「皆の好物は何なのかなぁ」と思うことは度々ある。

その理由は自分でも何故なのかはよくわからない。しかし推察するには、ひとえにきっと恐らく「食物」というものが各人の身体を物質的に形作っているからだろうとは何となく思う。音楽活動に必要なエネルギーは勿論のこと、その人が日々を生きる上での物理的・精神的な活力となるものだからこそ、食に関する嗜好が気になるのかも知れない。知らんけど。

なお、恐らくは深層心理で無意識的にそう思っているからこそ、私は「ユニットのみんなで鍋を囲みたい」と言い出したのだと思う。

そして先日、そんな私の個人的な野望を皆が叶えてくださり、夢であった鍋パーティーが会長のお宅で開催された。それはそれはもう実に楽しい会合で、帰り道に「大人になってもこんなに楽しいことってあるものなんだなぁ」としみじみ感動したものである……あ、大丈夫ですよ泣いてはいませんよ(※メンバーにはちょっとした事ですぐ泣く奴だと思われている)。

日本には予てより「同じ釜の飯を食う」という考え方があるが、まさにそれを体現するような会であったように思う。同じ鍋を囲み、具材を食べ、共に酒を飲んで語らうことによって、音楽とはまた少し違う連帯感を得られたのではなかろうか。少なくとも私個人はそう思っている。そうして同じ飯=同じエネルギーを分け合った仲間とまた音楽活動に勤しむことができたら、それは実に素晴らしい僥倖である……ていうか私達、月イチの定例会の時にも毎回おやつを食べて談笑してますよね(笑)

ちなみに余談ではあるが、我等が音楽ユニットのホームページに載っているメンバー紹介には本名、生年月日、出身地、血液型等は一切書かれていないのだが、それぞれの芸名と担当楽器、そして何故か好きな焼鳥の串(部位)が記されている。私はまさにそれこそ一番最高な紹介の仕方だと思っている。

という訳で、我等が音楽ユニットの方々は勿論のこと、その他の嗜好(嘉代子ちゃん関連、ラジオ関連)でSNSをフォローしてくださっている方、noteの執筆者の方々の中にもしこの記事を読まれた方がいらっしゃれば、決して強制ではないし無理に聞き出すことはしないのだが、何らかの折に好きな食べ物をちらっと聞かせて頂ければ幸いである。もしかしたらリアルで皆様にお会いする際の手土産の参考になるかも知れないし……

ちなみに、特に興味は無いかも知れませんが、私自身は牛タン、牡蠣、ラーメン(特に味噌)、納豆ご飯、実家の母が作る青椒肉絲と筑前煮あたりが好きです。うふふ。

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